「禊」とは?
「禊」とは「みそぎ」と読み、「身に罪や穢れのある者、また神事に従事しようとする者が、川や海の水でからだを洗い清めること。」を意味する言葉です。
かつては出産や死、月経、動物食などに関わることを穢れと言い、穢れた者が神社などに接近すること等が拒まれていました。そういった、穢れや罪などが身体にあるときや神事の前に、川や海につかって身体を清めることを「禊」と言います。
神に祈ってけがれを清め、災厄を取り除く「祓(はらえ)」の一種とされています。特に祭りの当事者や神役は、「禊」によって身体を清浄な状態にすることが必要でした。神事の前において参拝客が手水(ちょうず)で清めるのも「禊」の一つであると言われています。
「禊」の使い方
- 我が地域の祭りでは真冬に海に入り禊を行うのが決まりである。
- 神社でお参りをする時には必ず手水で禊をして穢れを落とすことを心がけている。
- 男は禊をするために川へ入水した。
- 修行の一環として滝で禊をして山に登っている。
「禊」の由来
「禊」の由来については、「古事記」と「日本書紀」によると、イザナミノミコトが黄泉(よみ)国から帰った際に、筑紫日向の橘の小戸(おど)の阿波岐原(あわぎはら)の流れで「禊」をして、その身体についた穢れを落としたのが始まりであるとされています。
しかし元来の意味は物忌みの後、水に入って若返り、神となるための行事であったとされており、祓と融合したのは後世からだとされています。
「夏越しの祓」
「禊」には「身体を清めること」という意味の他にもう一つ意味があります。それは「夏越しの祓えの行事」のことを指す意味です。「夏越しの祓(なごしのはらえ)」とは陰暦6月晦日(みそか)に、罪やけがれを除き去るため宮中および諸社で行われる禊の行事です。
疫病をまぬがれるとされるチガヤやワラで作られた茅の輪(ちのわ)をくぐったり、人形(ひとがた)を作って身体をなでて清め、それを水に流したりします。「みなづきばらえ」、「なごしのみそぎ」、「なつばらえ」とも言います。
「禊」の英語表現
「禊」を英語で表すと"purification"となります。「浄化する」という意味の"Pur(ify)"と「〜にすること」という意味の"ification"が合わさり作られた言葉です。「浄化、清めること」、「精製、精錬」といった意味を持つ言葉で、「清めの式」を表します。またカトリックにおいては聖餐式で行われる祭器具の清めのことを意味します。
「禊」の関連語
「御衣木」
「御衣木」は「禊」と同じく「みそぎ」と読み、「神仏の像を作るのに用いる木材」を意味します。仏像を造顕するための用材である「御衣木」を刻み出す前に、穢を除き、霊性をもたせるために行う儀式のことを「御衣木加持(みそぎかじ)」と言います。
御衣木の前に香華(こうげ)を供えて、御衣木・刀・斧に聖水を注ぎ、象の胸部に本仏の種子を書き、真言を唱えて行います。新古今和歌集には「ちはやぶる香椎(かしひ)の宮のあや杉は神の御衣木に立てるなりけり」という歌があります。
「禊川」
「禊川」とは「みそぎがわ」と読み、「禊をする川」を意味します。特に夏越の祓の神事を行う川のことを指していいます。
「浜降り」
「浜降り(はまおり)」とは「海辺で禊をすること。」を意味する言葉です。全国的に祭りの時に見られ、神輿(みこし)を水中でもむことを指す場合もあります。
沖縄県ではそれが厳格に行われており、海辺で3日2晩潔斎謹慎したり、親族が集まり浜辺で宴会を開いて深夜まで歌い踊って遊ぶなどの習俗が見られました。