「喉元すぎればあつさを忘れる」とは?
「喉元過ぎればあつさを忘れる」とは「苦しい経験をしても、過ぎ去ればその苦しさを忘れる」、また、「苦しい時に援助してもらったのに、楽になった途端にその恩義を忘れる」ことを例えたことわざです。
熱い飲み物や食べ物も、飲み込んでしまえば喉が焼けるように熱かったことを忘れてしまうように、苦しい時期が過ぎてしまえば、その苦しさも受けた恩も簡単に忘れてしまうことを言います。
よって、このことわざの「あつさ」を漢字で書く場合は、「熱さ」と書きます。
「喉元過ぎればあつさを忘れる」の使い方
- 大変だった時期に散々世話になっておきながら、今ではすっかり知らん顔なんてまさに喉元過ぎればあつさを忘れるだな。
- 喉元過ぎればあつさを忘れるもので、病気で痛い思いをしたのに回復した途端不摂生ばかりしている。
「喉元過ぎればあつさを忘れる」の英語表現
「喉元過ぎればあつさを忘れる」を英語で表現すると"Danger past, God forgotten."となります。「危険が去ると神は忘れられる」という意味です。
危ない状況になると「神様助けて」と神に助けを求めるけれど、安全な状態になればその神の存在も忘れてしまうことを表しています。苦しいときには神様に祈るという英語圏の宗教的背景からできた言葉であるとされています。
「喉元過ぎればあつさを忘れる」の類語
「病治りて医師忘れる」
「病治りて医師忘れる」とは「困難が過ぎてしまうと、人から恩をうけたことも忘れてしまうこと」の例えです。病気が治って苦しみから解放された途端、助けてくれた医師のことも忘れてしまうことからきています。「病治りて薬師(くすし)忘れる」とも言います。
「暑さ忘れて陰忘る」
「暑さ忘れて陰忘る」は、暑さが去るとすぐに木陰のありがたみを忘れることから、「苦しい時に人から受けた恩も、楽になるとすぐに忘れてしまうこと」を例えています。
暑かったことよりも涼しませてくれた陰に重きが置かれており、苦境を忘れることよりも恩を忘れることを強調する場合に使う言葉です。
「雨晴れて笠を忘る」
「雨晴れて笠(かさ)を忘る」とは「苦しい時期に恩を受けても、その時期が過ぎると忘れてしまうこと」の例えです。雨が上がるとすぐに、雨よけに使っていた笠の存在を忘れてしまうことからきています。
「魚を得て筌を忘る」
「魚を得て筌を忘る」(うおをえてうえをわする)は、魚をとってしまうと漁具のありがたさを忘れてしまうことから転じて、「ひとたび目的を達してしまうと、それに役立ったものの恩恵を忘れる」という意味です。
「筌(うえ)」は水中に沈めて魚をとる竹製の道具のことで、「うけ」「せん」とも読みます。『荘子・外物』に「筌は魚に在る所以にして、魚を得て筌を忘る。蹄(てい)は兎に在る所以にして、兎を得て蹄を忘る」とあるのが由来とされています。
また、「兎を得て蹄(わな)を忘る」という言葉も同じ文章を語源としているそうです。
「喉元過ぎればあつさを忘れる」の対義語
「羹に懲りて膾を吹く」
「羹に懲りて膾を吹く」(あつものにこりてなますをふく)は、熱い吸い物を飲んでやけどをしたことに懲りて、冷たいなますも吹いて冷まそうとすることから、「前の失敗にこりて必要以上の用心をすること」を表している例え言葉です。