「成る」の意味
「成る(なる)」は「成す(なす)」の自動詞形で、人為的ではなく、自然のなりゆきで推移(すいい)変化して別の状態になることです。
例えば「為せば成る(なせばなる)」という慣用句は、作業をした(為す)ことで変化が起こった(成る)という、原因と結果の説明になっています。
「成る」の使い方
「成る」の例
- 成立する、実現すること。「ローマは一日にして成らず」「功成り名遂げる(こうなりなとげる。一つの事業を成しとげて、名誉もあわせて得ること)」「悲願の優勝が成る」
- 構成される、成り立つこと。「水は酸素と水素から成る」「国会は衆議院と参議院から成っている」
- その人の仕事や制作にかかっている。「この詩は李白の手に成るものだ」「巨匠の筆に成る名品」
- ある経過や変化をたどった結果。「大人に成る」「保証人に成る」「苦労が水の泡に成る」
- 時間経過により、ある時期、時刻、天候などになること。「合否は明日に成るとわかる」「約束の時間に成っても来ない」「明日は雨に成りそうだ」
- 罰則が適用されること。「その行為は反則に成る」「痴漢は犯罪に成る」
- 重要な役割を果たすもの。「兄の活躍は自分の励みに成る」「そばにいるだけで頼りに成る」「この光景は絵に成る」「てんで話に成らない」
ただし、どの場合も、現在は一般的にはかな書きの場合が多いようです。
現在で使わない例
古くは「来る」の非常に高い敬語として、「おでましに成る」「お成りあそばす」「お成りになりました」というように「成る」を使っていました。
将棋の「成る」
将棋で、王将と金将以外の駒が敵陣に入って裏返されると、飛車と角は金将+銀将の働きを併せ持ち、他の駒は金将と同じ働きをするようになります。このルールのことを、例えば「歩(ふ)が金に成る」と言います。「成金」という言葉の語源です。
「成る」の類語
「成る」の類語は「出来る(できる)」「成り立つ(なりたつ)」「仕上がる(しあがる)」「出来上がる(できあがる)」です。
「出来る」はある意図をもって、能動的に働きかけを行った結果の意味で、自然に「成る」こととは違っています。
「成り立つ」は多くの場合バラバラだったものが、なんらかの組み立ての作業を必要として一つの形にまとまった結果のことで、「仕上がる」はいっそう人の作業の介入が含まれ、「出来上がる」は作業がすっかり完成する意味になります。
「成る」の英語
「成る」の英語はto become(広い意味合いの「成る」)、to be finished(仕上がる、出来上がる)、be completed(完成する)、to be concluded(成り立つ)などになります。
【例文】
- 功成り名遂げる(こうなりなとげる)…achieve distinction and fame
- 鉄橋架設が完成する…The railway bridge has been completed.
- この壁画は三人の画家の手に成る…This mural was done by three artists.
- 五章から成る論文…a thesis consisting of five chapters
- そのグループはいろいろな職業の人から成っていた…The group was composed of people of various occupations.
- その仕事はきれいに仕上がった…The work was finished nicely.
- 新しい委員会の成立は彼の熱意に負うところが大きい…The formation of the new committeeowes a great deal to his zeal.
- 両国の間に条約が成立した…A treaty was concluded between the two nations.