「モノローグ」とは?
「モノローグ」"monologue"とは、演劇・舞台用語のひとつで、登場人物が相手との会話なしに心情や考えを述べる台詞(せりふ)のことです。「独白(どくはく)」ともいい、人物の「心の声」などと呼ばれることもあります。
古くから知られている演出方法であり、現代では演劇のほか、映画、ドラマ、文学作品、漫画など、さまざまなメディアにおいて使われています。
「モノローグ」の語源
"monologue"(英・仏)は、ラテン語の"mono"「ひとつ、単」と、”logue”「話、談話」が組み合わされてできた言葉であり、「ひとりの話、ひとりごと」という意味です。
「一人芝居」の意味もある
「モノローグ」はひとつの演出技法ですが、これを拡大して、すべてを演者1人のみで行う舞台のことを指す場合もあります。いわゆる「一人芝居」のことであり、「独演劇」「モノドラマ」「ワンマンショー」などと同義語です。
「モノローグ」の役割
一般的に「モノローグ」は、劇中人物の思考・感情・心理など、通常は表面に表れにくい人間的な「内面」を描き出し、それを観客に伝えるために使われます。
「相手との対話がない」ことがモノローグの条件ですが、演劇に限らず創作物においては「観客という相手」が必ず想定されるのであり、観客に劇中人物の胸中を伝えるのがモノローグの役割です。心理描写と言い換えることも可能です。
その場にいない登場人物や、「天」や「神」や「運命」、もしくは「自分自身」などに向けた台詞も、本質的には「観客」に向けた台詞であり、モノローグです。観客に感情の矛先を向けたり、問いを投げかけたりする形のモノローグもあります。
『ハムレット』に見る「モノローグ」
ウィリアム・シェイクスピアの『ハムレット』より、世界的に有名なモノローグとして知られる一節をご紹介します。第三幕第一場の冒頭、デンマークの王子ハムレットが、殺された父の復讐を果たすべきかどうか自問するシーンです。
Whether 'tis nobler in the mind to suffer
The slings and arrows of outrageous fortune,
Or to take arms against a sea of troubles,
And by opposing end them?
生きるか、死ぬか、それが問題だ。
どちらが立派な生き方か、
気まぐれな運命が放つ矢弾にじっと耐え忍ぶのと、
怒涛のように打ち寄せる苦難に刃向い、
勇敢に戦って相共に果てるのと。(訳:野島秀勝)
この後数十行にわたってモノローグが続きますが、「私」を示す言葉が一度も登場しないことが特徴となっており、ハムレットという個人を超えて、この世にある不条理や矛盾について観客に問いかけていると解釈することができます。
「モノローグ」の類義語
「モノローグ」の類義語として、「ソリロキー」"soliloquy"と「傍白(ぼうはく)」があります。
ソリロキー
モノローグとの厳密な区別はないものの、思想や感情がおのずからあふれ出し、言葉となった台詞のことを意味しています。先に紹介した『ハムレット』の一節も、ソリロキーであると言われています。
傍白
英語"aside"(アサイド)の訳語であり、モノローグの一種ですが、目の前に話し相手がいたとしても、声が「聞こえない」ものとして扱われ、観客にのみ届けられる台詞のことです。脇台詞(わきぜりふ)ともいいます。
「ダイアローグ」とは?
「モノローグ」と対義語関係にあるのが「ダイアローグ」"dialogue"であり、日本語では「対話、会話」という意味になります。語源は"dia-"「横切る」と"logue"「話、談話」を合成したものです。
モノローグと並んで古くから演劇や文学、哲学などに利用されてきた技法であり、ダイアローグによってまとめられた著作は「対話篇」とも呼ばれます。モノローグと一対の言葉として覚えておくとよいでしょう。
「モノローグ」まとめ
近年、演劇や文学作品のみだけではなく、若者向けの漫画やアニメの中などにも「モノローグ」は頻繁に見かけることができます。それだけ、人間の内面に対する興味・関心が若い世代でも高まっているといえるのかもしれません。
劇中の人物が「モノローグ」を話し始めたら、その真意についてぜひ詳しく考えてみてください。作品に対する理解が一段と深まることでしょう。