「損して得とれ」の意味
「損して得とれ」は、一時的には損をしても、長い目で見て得になるようにせよ、という意味です。
金儲けには様々なやり方があります。例えば今何かを安く売って「損」をしたとしても、それがお客様の信用や、世間への宣伝効果を獲得したとすれば、将来的に大きな「得=利益」を手に入れることにつながります。
このように「損して得とれ」は目先の損失にこだわらず将来の大きな利益を確保せよ、という教訓が込められています。ただし、損のしっぱなしにならないよう「海老で鯛を釣る」ような将来の利益の計算が前提となります。
「損して得とれ」の例文・用例と使い方
「損して得とれ」の例文
- 商店街の企画に賛同し、私の店でも無料講習会を開催した。手間も時間もかかったが、興味を持ったお客様がいつかご来店下されば儲かる。損して得とれだ。
- ランチは宣伝効果を期待して格安で提供している。損して得とれというけれど、実際ランチに来たお客様が後日忘年会の団体予約を入れてくださった。
「損して得とれ」の用例
織田作之助『夫婦善哉(めおとぜんざい)』(1940)
「損して得とれ」は、これらの例文や用例のように、商売のやり方に対する教訓の言葉、商売で成功を収める秘訣の言葉としてよく使われます。
松下幸之助の「損して得とれ」
家電メーカー、パナソニックの創立者である松下幸之助は、昭和40年1月30日の松下電器本社における総合朝会の中で、以下のような言葉を述べています。
『松下幸之助発言集30』
松下幸之助の言う「損して得とれ」は、まず何よりサービスが大切だということです。サービスには色々なやり方があり、笑顔や礼儀もサービスの一つです。そうした人として当たり前の心得、正しい礼儀なしで、利益を得ようと思うのはダメだ、と言っているのです。そして、それは商売のみならず個人においても同じことだ、と続けています。
「損して得とれ」の類語
- 損せぬ人に儲けなし
- 損をせねば儲けもない
- 損は得の始め
- 損して利を見よ
「損して得とれ」と「一文惜しみの百知らず」の違い
「一文惜しみの百知らず」は、たった一文の金を惜しんだばかりに、後に百文もの損害を被ることになる、という意味です。つまり、目先のわずかな損得にとらわれて後で大損をする、ということです。
「損して得とれ」が、小さな利益を捨てて大きな利益を取れ、という積極的な商法を意味するのに対し、「一文惜しみの百知らず」は、目先の損得にとらわれて将来の展望や全体像に考えが至らない愚かさを例えたことわざだと言えます。
「損して得とれ」の英語表現
- What you lose on the swings, you gain on the roundabouts.(ブランコの損は回転木馬で稼ぐ)
- Sometimes the best gain is to lose.(時には損が最高の利となる)
「損」が含まれる表現
【損して恥かく】損をしただけでなく恥をかく。つまらないことが重なって散々な目にあう。
【損と傷は癒えあう】損はし続けることはなく、いつかは取り戻せるものだ。同様に、傷もいつかは必ず回復するものである。
【損した港に船繋げ】損をしてもそのまま落ち込んで逃げてしまってはいけない。
【損と身の祈祷はせぬ者がない】誰でも損はするものである。また困れば誰もが神仏に祈るものである。