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「火のないところに煙は立たない」の意味
「火のないところに煙は立たない」は、噂が立つのは何かしらその原因となる事実がある、という意味です。
火種がないところから煙が立つことはありません。それと同じように、根拠となるような事実がまったくなければ、噂が立つこともないと考えることができます。噂が立つというのは疑わしい事実があるからだ、と強く示唆する逆説的な例えです。
「火のないところに煙は立たない」の例文・用例と使い方
では「火のないところに煙は立たない」が実際どのように使われているのか、例文や用例を見てみましょう。
「火のないところに煙は立たない」の例文
- あの店のブランド品、偽物っていう噂を聞いたよ。火のないところに煙は立たないって言うから、買わない方がいいかもね。
- 斎藤さん、会社辞めるんだって。火のないところに煙は立たぬっていうことわざの通り、引き抜きの話は本当だったんだね。
「火のないところに煙は立たない」「火のないところに煙は立たぬ」は同じように使うことができます。
「火のないところに煙は立たない」の用例
島崎藤村『破戒』
ここでは「立つ」ではなく「揚がる」という動詞が用いられていますね。意味としては同じで、噂に何らかの根拠があったと推測する例えとして使われています。
この他、「火のないところに煙は立たない」の一部をタイトルにした小説もあります。芦沢央さんの『火のないところに煙は』というミステリーです。こちらは2019年本屋大賞にノミネートされています。どんな内容なのか想像がふくらむタイトルですね。
「蒔かぬ種は生えぬ」との違い
使い分けに注意が必要なことわざとして「蒔かぬ種は生えぬ」があげられます。「蒔かぬ種は生えぬ」は、原因がないところに結果はない、という意味です。一見「火のないところに煙は立たない」と似たような意味だと思ってしまいそうですが違います。
「蒔かぬ種は生えぬ」は、種を蒔かなければ芽が出ることはない、よい結果を得ようと思ったらそれなりの準備や努力が必要だ、という意味で使われます。以下のように使います。
- イタリアンレストランを開きたいんだって?夢だけ語っていても始まらないよ。蒔かない種は生えぬというからね。
「火のないところに煙は立たない」の由来
「火のないところに煙は立たない」は、幕末以前の用例が見当たりません。一方、英語などには類似の表現が多く見られ、明治時代に西洋から入って来たとする説が有力なようです。日本語での表現は少しずつ変化していますので、その変遷を見てみましょう。
- 煙の有る所に火あり(1889年『和漢泰西金言集』)
- 火無き所に煙は起こらず(1892年『和漢泰西ことわざ草』)
- 煙の在る所には火あり(1901年『和英対訳西洋古語格言』)
- 火のない所に煙は立たぬ(1908年『日本俚諺大全』)
これ以降は「火のないところに煙は立たぬ」という言い回しで、日本のことわざとして定着していったようです。
「火のないところに煙は立たない」の英語表現
- Where there is smoke,there is fire.(煙が立っているところには火がある)
- No smoke without fire.(火のないところに煙は立たぬ)
- Make no fire, raise no smoke.(火をたかなければ、煙は立たない)
「火のないところに煙は立たない」の類語
- 無い名は呼ばれず
- 影も無いのに犬は吠えぬ
- 涸れ池の堤は切れぬ
- 飲まぬ酒には酔わぬ
「火のないところに煙は立たない」の諸外国での表現
- 針がなければ糸を通せない(台湾)
- 風がなければ波は立たない(中国)
- 風がなければ木は揺れぬ(アフガニスタン)
- 無から噂は出てこない(ノルウェー)