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「遠くの親戚より近くの他人」の意味
「遠くの親戚より近くの他人」とは、いざという時には、遠く離れた親戚よりも近くに住む他人の方が頼りになる、という意味です。
遠く離れていると、血縁関係があったとしても疎遠になりがちです。一方、他人でも近くにいる人たちの中には親しく付き合う人も出てきます。また、何か緊急事態が起こった時、例えば東京に住んでいたら、地方在住の親戚の助けを借りたくてもかなりの時間を要してします。しかし、近くにいる人ならすぐに駆けつけてもらえます。
ですから、近所の人たちとの付き合いは大切にした方がいいという教えも込められています。
「遠くの親戚より近くの他人」の例文と使い方
- 異国への赴任で不安に思っていたが、優しい先輩に色々教えてもらっている。遠くの親戚より近くの他人というが、その通りだと思う毎日だ。
- 一人暮らしを始めてすぐに高熱で寝込んでしまった。電話をしたら近所の友だちが病院へ連れて行ってくれ、二日後には出勤できた。遠くの親戚より近くの他人だと実感したできごとだった。
- ここで出会ったのも何かの縁です。遠くの親戚より近くの他人と言いますから、困ったことがあったら何でも相談してくださいね。
何か困った時や緊急の際に、近くにいる他人にお世話になる、というケースで使われていますね。平時にはあまり意識しませんが、近隣の人の助けはありがたいものです。相互扶助の気持ちを忘れないようにしたいですね。
「遠くの親戚より近くの他人」の由来
「遠くの親戚より近くの他人」の出典には諸説あるようです。中国の古典にはこれに類似した色々な表現があるのですが、その中の一つが『明心宝鑑』に見られます。以下にその一節をご紹介します。
(遠いところに水がたくさんあっても近くの火事を消すのは難しい)
遠親不如近隣
(遠くにいる親戚は隣近所にいる人に及ばない)
一方、日本では『毛吹草』(1645年)に以下のような表現があります。
日本における言い回しは、従来は「遠き親子より近き隣」だったようです。その「親子」が後に「一家」や「親類」「親戚」になり、「遠い一家より近い隣」「遠き親類より近き他人」という表現に変化していったと言われています。
「遠くの親戚より近くの他人」の英語表現
- A near friend is better than a far-dwelling kinsman.(近くの友人は遠い親戚に優る)
- Good neighbor is better than a brother far off.(良き隣人は遠くの兄弟より優れている)
「遠くの親戚より近くの他人」の諸外国での表現
- 遠いところの水は、火を消せない(イタリア)
- 良き隣人は遠い親戚に勝る(ドイツ)
- 遠くにある鍛冶屋より、家にある砥石の方がいい(スリランカ)
- 遠い家族よりも隣人の死を悼め(タンザニア)
- よき隣人は遠くの兄弟よりありがたい(南アフリカ)
- いくら悪い嫁でも三度の飯は温かい、どんなに良い娘でもまだゆっくりと手を振り振り来る途中(台湾)
「遠く」が含まれる表現
「遠くの親戚より近くの他人」以外にも、「遠く」が含まれる表現がありますので、いくつかご紹介します。
【遠くて近きは男女の仲】
男女の仲というのは、遠く離れているように見えても意外と近いもので、結ばれやすい。
【遠くなれば薄くなる】
親しくしていた人でも、遠く離れてしまうと少しずつ情が薄れ疎遠になっていく。
【遠くの火事より背中の灸】
たとえ大事件であったとしても、自分に直接関係のない遠くのできごとより、自分に直接関係する小さなできごとの方が気にかかる、という例え。