「ステルス」の意味と由来
「ステルス(stealth)」とは、「隠密」、「こっそり行う」という意味の外来語で、語源は「盗む」を意味する「スティール(steal)」と同じです。
以前はこの単語が使われるのは軍事分野だけでしたが、「ステルスマーケティング(ステマ)」など、最近は広く用いられるようになりました。
軍事分野における「ステルス」
「ステルス技術」
「ステルス技術」とは、「航空機、艦艇、車両、ミサイルなどが敵に探知されないようにする技術」のことです。一般的には、下記の1〜3の探知機を避ける技術を指しますが、広義には4も含まれます。
- レーダー探知を避ける:レーダーに映りにくい形状、レーダー波吸収塗料など
- 赤外線センサーの探知を避ける:エンジン排気の冷却など
- 音響センサーの探知を避ける:エンジン音やヘリ回転翼の風切り音の静粛化など
- 視覚的にカムフラージュする:周囲の色に合わせた塗装、迷彩服など
「ステルス機」
「ステルス機」とは、「ステルス技術が使用された機体(航空機)」を指します。機体のステルス性(主にレーダーは探知の回避)実現には、電波透過素材や電波吸収素材の使用、さらなる向上のためにはレーダー波を散乱させる機体形状が必要です。
航空機だけでなく、駆逐艦やフリゲートなどの海上兵器にもステルス技術が用いられ、艦橋を斜めの平面で構成するなどしてRCS(レーダー反射面積)を小さくし、実際の船体の大きさよりも小さく見せかけています。
セールス分野の「ステルス」
「ステルスマーケティング」
「ステルスマーケティング(Stealth Marketing)」とは、「宣伝であることが消費者に分からないように宣伝すること」を指す言葉で、省略すると「ステマ」。また、英語では「アンダーカバー・マーケティング(Undercover Marketing)」とも言われ、反対語は「ダイレクトマーケティング(direct marketing)」です。
インターネット上では、次のような手法があります。
- 口コミ情報サイトで、自社の商品について好意的なコメントを投稿する。
- ネットショップのレビューなどで、自社の商品に高評価をつける。
- SNSで好意的な記事を投稿してもらう。
リアルにおいても、新商品や新店舗などにアルバイトに行列を作らせて流行っているように見せかける行列商法や、意図的な買い占めによって売り切れ続出を演出する手法はよく知られています。
ステルスマーケティングは、中立の第三者を装った人による「やらせ」なので、発覚した場合は、消費者から「騙された」、「裏切られた」と非難を受け、信用を落とします。また、事実と異なる情報が伝わることは消費者の不利益にも繋がるため、国によっては法律によって規制されています。
「ステルス布教」
「ステルス布教」とは、「宗教団体の信者が勧誘とは別の目的を装って接触し、勧誘すること」で、学生相手の宗教勧誘でよく使われる手口です。
東日本大震災以降は「ボランティア活動をしませんか?」など言われて説明会に行くと実は宗教の説明会だった、というケースが多く発生し、問題となりました。
一方、二次元やアイドルなどのファンが、自分の「推し」をそれとなく人に勧めることを「ステルス布教」ということもあります。
IT分野の「ステルス」
SSIDステルス
「SSIDステルス」とは、「SSIDを非表示にすること」を指す言葉です。SSID(Service Set Identifier)とは、Wi-Fi(無線LAN)のアクセスポイント(AP)の識別子のことです。街中でスマートフォンのWi-Fi設定を見ると、近場のAPが沢山表示されますが、そこに表示されている各APの名前がSSIDです。
SSIDは、無線LANルーター、公衆アクセスポイント、モバイルルーター、スマホのテザリング機能など、すべてのWi-Fiの親機が所有しています。APは、周囲の端末から発見しやすいようにSSIDを含むビーコン信号を発信しており、スマートフォンのWi-Fi設定のAPもこの信号を受信して表示されます。
SSIDステルス機能をオンにするとビーコン信号が発信されなくなり、他の端末からAPを検索しても表示されません。ただし、SSIDステルス機能は、信号による能動的な広報が停止するだけで、Wi-Fi通信自体を保護するわけではありません。不正アクセスを防ぐためには、他のセキュリティ対策との併用が望ましいとされています。
ステルス型ウイルス
「ステルス型ウイルス/ステルスウイルス(stealth-type virus)」とは、「コンピューターのユーザーやウイルス対策ソフトに検知されないように巧妙に偽装されたコンピューターウイルスの総称」です。
ゲーム分野の「ステルス」
「ステルスゲーム」
「ステルスゲーム(stealth game)」とは、コンピューターゲームのジャンルの一つで、「敵に発見されないよう物陰に隠れながらミッションを遂行するタイプのゲーム」を指します。
主人公(プレイングキャラクター)は特殊部隊員、諜報員、忍者などが多く、敵の本拠地に潜入して秘密工作や暗殺などのミッションを行います。代表的な日本のステルスゲームには、「メタルギア」シリーズや「天誅」などがあります。
人狼ゲーム
「人狼ゲーム」における、「ステルス(ステ)」には次のような意味があります。
- 議論に消極的で、目立つ振る舞いを避けること。または、そのような人。
- 「役職者」、「人狼」が一般の村人を装うこと。
「人狼ゲーム」とは、プレイヤーが村人チームと人狼チームに分かれ、相手の正体を推理するゲーム。ゲームは半日単位で進み、昼にはプレイヤー全員の投票で決まった人狼と思しき1名の処刑が、夜には人狼による村人1名の襲撃が行われます。人狼全員を処刑すれば村人チームの勝利、生存する人狼と同数まで村人を減らせたら人狼チームの勝ちです。
人狼チームはお互いが人狼であることを知っていますが、村人には素性は明かされません。その代わり、村人の中には特殊な能力を持った役職者がおり、一夜につき一人の正体を知ることができたり、一夜につき一人だけ人狼の襲撃から守ることができるという特権が与えられます。
- 使用例:「人狼がステルスすぎると疑われやすい。」
サブカル、俗語分野の「ステルス」
「ステルス」という言葉が広く浸透するとともに、一般的な場面でも使われるようになりました。
- 「あのキャラの衣装はステルス性が高い。」→本来はもっと魅力的なのに、ボディーラインが衣装で隠されていしまっている。(脱ぐと凄い。)
- 「彼は本当にステルス性が高い。/ステルスだ。」→存在感が薄くているのかいないのか分からない。
- 「このキャラクターTシャツはステルス性が高い。」→一見キャラクターグッズだと分からないので、着用、所持していてもオタクだとバレにくい。キャラグッズに見えないので普段から使用できる。