「臍」の読み方
「臍」は「へそ」「ほぞ」と読みます。音読みは「さい」「せい」です。
「臍」の意味と使い方
哺乳類のへその緒のあと
皆さんのお腹の真ん中にあるくぼみで、お母さんのお腹の中に居たときの「へその緒」が付いていた跡のことです。
「へその緒」はお母さんから胎児へ栄養や酸素を補給するために使われていた、ひも状の器官のこと。これがないとお母さんのお腹の中で赤ちゃんは生きていけないですよね。そこから長じて、次から説明する意味のように、「臍」は物事の中心や大事なこと、なども表すことがあります。
古くは「雷様におへそをとられるよ」というように使います。雷が鳴ったときにお腹を冷やさないよう、子供にしつけるための言葉ですね。他にもおへその部分に服がない「へそだしルック」などの使い方があります。
物の中央にある「でっぱり」や「くぼみ」
パン屋さんで買ったあんぱんの上部真ん中がへこんでいることがありませんか?これは、あんぱんを焼く前に、中の餡と生地の間に隙間ができないようあらかじめ生地をへこませるからです。その部分を「あんぱんのへそ」といいます。
(家具など)重なりの部分にある小さな突起
石臼や重ね家具がずれないよう、固定するためのでっぱりや連結部分のことです。「石臼のへそ」といいます。石臼の上下の石を固定する軸のことですね。石臼は軸を中心に上下の石を回転させ、擦り合わせて食品を粉にします。
物事の中心やポイント
「おへそ」はからだの中心にある大事な部分です、長じて、物事の中心や重要な部分を示すようになりました。「日本列島のへそ」のように使います。日本の中心地という意味ですね。ちなみに「日本のへそ」を自認する場所は日本に6箇所存在します。それぞれ主張する「中心」の意味が違いますが、「日本のへそ」めぐりをしてみるのも面白いですよね。
また重要な部分を意味する用例としては、「この機器の導入は当ビジネスプランのへそだ」「君の論文のへそがわからない」のように使います。
「臍下丹田」(せいかたんでん)
「臍下丹田」(せいかたんでん)という熟語があります。意味は、「へそと恥骨の間の腹中にあり、東洋医学の身体論で、心身の活力の源である気の集まるといわれるところ」で、「臍下丹田に力を入れる」というように使います。ヨガやスポーツ理論で、集中力を増したり平常心を保つために使われることもあります。
その場合重要なのは、「臍の下に意識を置く」ということで、実際に力を入れる必要は必ずしもないそうです。臍は人間の体の真中にあり、意識をすると平常心を保つことができる。それを知っているだけで、緊張を強いられる場面などで役に立ちそうですね。
他の「臍」を使った単語や熟語
「出臍」(でべそ)・「臍ヘルニア」(さいへるにあ)
生まれて間もない赤ちゃんはお臍の下の筋肉が閉じていないため、腸が飛び出してくることがあります。その状態を「出臍」「臍ヘルニア」といいます。「息子は出ベソが治らないので、手術することになったので心配だ」
「臍繰り」(へそくり)
主婦などが家計をやりくりしたりして、有事に備え貯めたお金のことです。「へそくりが貯まったので、密かに一人旅の計画を立てている」
「臍で茶を沸かす」・「臍茶」
やることが馬鹿げていたり子供じみていたりして、おかしくてたまらないたとえ。笑止千万の意味。相手をバカにした意味で使います。「彼がそんなホラ話をしているなんて、臍で茶が沸くよ」。「臍が宿替えする」(へそがやどがえする)とも言います。
「臍を曲げる」・「臍曲がり」
何かがきっかけとなり、機嫌を悪くし、人の言うことに耳を傾けなくなることです。また、そのために他人の言うことにいちいち逆らう人のことです。「あの人はちょっとしたことですぐ臍を曲げるから気をつけて」
他にも以下のような「臍」が使われる以下のような表現があります。
・臍の緒を切ってから:「生まれてから初めて」の意味です。例)「そんなことは自分が臍の緒切って以来初めてだ」
・「臍を固める」(ほぞをかためる)固く心を定める。覚悟を決めることです。例)「彼女はすでに決心の臍を固めていて自分には覆しようがなかった」
・「臍をかむ」(ほぞをかむ)後悔すること。及ばないことを悔やむことです。例)「彼は試験に落ちてもっと勉強しておけばよかったと臍をかむ思いをした」
臍を含んだ面白い名前
「臍柑」
「臍柑」は「へそかん」と読みます。スーパーや八百屋さんで売っている「ネーブルオレンジ」のことです。ブラジル原産で球形で、さわやかな酸味と甘みがあり、上部に臍のような突起があります。英語では"navel"と書き、「臍」の意味です。
「臍猪」
「臍猪」は「へそいのしし」と読みます。「ペッカリー」の和名です。ペッカリーは偶蹄目ペッカリー科に属する哺乳類のことで、外見はイノシシに似ています。南北アメリカの森林に群れを作って住んでいます。
「臍帯血移植」の話
「臍」に纏わる治療法もあります。「臍帯血移植」は「さいたいけついしょく」と呼び、出産時に採取した臍帯血を、白血病・再生不良性貧血などの血液系の難病患者に移植する治療法のことです。
「臍帯血」には、血小板をを作る作用がある造血幹細胞が多く含まれていること、また、移植時に拒絶反応が少ないという理由から、こうした治療が実施されています。
お臍の手入れ
最後に、体の中心であるお臍の手入れについてご紹介します。しばらく掃除していないと、いつのまにかお臍に黒いゴマが溜まっていた・・・。そんな経験がありますよね?でも、慌ててぐりぐり綿棒でいじってはいけません!
お臍の下には腹膜や臓器があるため、しつこくいじるとお腹が痛くなってしまいます。普段のお手入れとしては、お風呂で体を洗うときに、指に泡をつけて、お臍の穴を優しくなでてあげるくらいで十分です。それでも汚れが気になるときは、綿棒にベビーオイルをつけて優しくゴマをとりのぞきましょう。