「悪銭身につかず」の意味
「悪銭身につかず」とは、不正な方法で手に入れた金銭は、無駄遣いしてしまいすぐになくなってしまうものだ、という意味です。お金は汗水たらして一生懸命働いて手に入れるべきだ、という教えが含まれています。
「悪銭」とは
「悪銭(あくせん)」には、二つの意味があります。一つ目は、粗悪な材料で作った貨幣、という意味です。しかし、「悪銭身につかず」における「悪銭」の意味はこれではありません。「悪銭身につかず」の「悪銭」は、正しくない方法で手に入れたお金、という意味です。
「悪銭身につかず」の例文・用例と使い方
では、「悪銭身につかず」がどのような場面でどう使われているのか、具体的に見てみましょう。
「悪銭身につかず」の例文
- 競馬で10万円もうけたが、悪銭身につかずで一晩で飲み切ってしまった。
- ばあちゃんに教材費が足りないと嘘をついて3万円もらったが、パチンコにつぎ込んですってしまった。悪銭身につかずとはこのことだ。
- 賽銭泥棒が捕まった。3千円ほど盗られたのだが、捕まった時の所持金は50円だったそうだ。悪銭身につかずであっという間に使ってしまったのだろう。
「悪銭身につかず」の用例
尾崎紅葉『金色夜叉』(1897~98)
太宰治『グッド・バイ』(1949)
『金色夜叉』にある「非道」とは、人の道に外れたこと、という意味です。また『グッド・バイ』の中の「お金をもうけた手段」は、闇商売の手伝いでした。「悪銭」とはこのように不正な手段で手に入れたお金のことです。
しかし、競馬・競輪・宝くじなど、不正ではないけれど、働いて得たものではない金も「悪銭」に含まれる、とする説もあります。
不正な手段やギャンブルなどで得たお金は、苦労していないので大切にしないものです。そうしたお金をついついつまらぬことに使ってしまう、浪費してしまう、という場合に「悪銭身につかず」が使われています。
「悪銭身につかず」の類語
- あぶく銭は身につかぬ
- 人垢は身につかぬ
「悪銭身につかず」の対義語
「悪銭身につかず」と反対の意味を持つ表現に、「正直の儲けは身につく」があります。これは、「正直に稼いだ金は、貴重さがよくわかるので、無駄遣いはしない」という意味です。
「悪銭身につかず」の英語表現
- Ill gotten, ill spent.(不正に得たものは身につかない)
- Soon gotten,soon spent.(手軽に得た金はすぐなくなる)
- Evil-gotten goods never prove well.(不正な所得はよい結果をうまない)
「悪銭身につかず」の諸外国での表現
- 悪いことで手に入れた財産は、決して役に立ちはしない(フランス)
- お金は、やって来たように去る(ポルトガル)
- 他人のものをちょろまかすと灰になる(タジキスタン)
- 風がもたらしたものは、風が持ち去る(イラン)
「銭」が含まれる表現
「悪銭身につかず」の他にも「銭」が含まれる表現がありますので、いくつかご紹介します。
【一銭を笑う者は一銭に泣く】
一銭を粗末に扱う人は、やがてその一銭が得られず困る羽目になる、という意味です。この場合の「一銭」は、わずかな金を意味します。
【江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ】
江戸っ子は、その日に稼いだ金はその日のうちに使い果たしてしまう、という意味です。この場合の「江戸っ子」とは、主に江戸の職人を言います。江戸っ子の気前の良さを自慢したり、金離れの良い江戸っ子気質を表現したりする言葉です。
【安物買いの銭失い】
安い物をお買い得だと思って買っても、品質が悪く結局は買い替える羽目になり損をする、という意味です。