「煽る」の意味
「煽る」という言葉の一般的な意味は以下のとおりです。
- そそのかす、おだてる、煽動する
- 風や火の勢いで物を動かす、そのように揺れ動かす
- 鐙(あぶみ)で障泥(あおり)を蹴って馬を急がせる
- 大手企業が相場を騰貴させるために大量の買い付けをすること
- 写真撮影で、低い位置からカメラを上向きにすること
煽る:そそのかす、おだてる、煽動する
「そそのかす、おだてる、煽動する」という意味を持つ「煽る」ですが、近年は主に「煽動する」という意味で用いられています。
インターネット上で使われる「煽り」とは、「相手の怒りの感情を刺激するための発言」を指すネットスラングです。ただし煽る側が相手を煽動しようとする明確な意思をもたない場合も「煽り」と称されることがあるため、厳密には「挑発」のニュアンスで使用されているようです。
また近年大きな社会問題となっている「煽り運転」もこの意味の分類に入り、「他人(の車)が速く行くように煽動する」という意味が込められています。
「煽り運転」とは
近年「煽り運転」による交通事故が横行していますが、煽り運転とは、「自動車やバイク、自転車に対して、周囲の運転者がそれらに乗る運転者を運転中に煽ることによって、交通の危険を生じさせる行為」を指します。
ただし「前の車を急がせるために車間距離を詰めて自動車を走行させる」といった、本来の意味での「煽り(煽動)」を超えて、追い回しやクラクション、無理な割り込み後の急ブレーキなどを行うケースも見られます。この場合も「煽り運転」と呼ばれますが、その本質は煽動ではなく威嚇です。
2017年6月に起こった東名高速夫婦死亡事故においては、煽り運転を行ったドライバーに危険運転致死傷罪が適用され、2018年12月の裁判で懲役18年の刑が言い渡されました。また2018年7月、煽り運転の末バイクに乗っていた男性を死亡させたドライバーには、明確な殺意があったとし一審判決で殺人罪が適用されました。
煽る:風や火の勢いで物を動かす
「風や火の勢いで物を動かす」という意味の煽るは、以下のように使われます。
- 裾が風で煽られる
- 風に煽られて火が燃え広がる"
また「揺れ動かす」という意味から「足で煽いで泳ぐ」といった表現もされ、日本古来の泳法である"伸(のし)"で泳ぐときの足の動かし方を「煽り足」といいます。
煽る:馬を急がせる
「馬を急がせる」という意味の「煽る」という表現は、古典『平家物語』の「木曽最期」に登場します。
深田ありとも知らずして、馬をさつとうち入れたれば、馬の首も見えざりけり。
煽れども煽れども、打てども打てども働かず。
(正月21日の夕暮れ頃のことだったので、薄氷が張っていた。ぬかるんだ田んぼがあるとも知らず、馬をざっと乗り入れると、馬の首も見えなくなった。煽っても煽っても、鞭で打っても打っても動かない)
『平家物語』木曽最期より
「煽る」の類語・対義語
煽動するという意味の「煽る」の類語には、以下のようなものが挙げられます。
- 挑発
- 教唆
- 刺激
「煽る」の英語表現と意味
「煽る」を英語で表す場合には、意味によって分ける必要があります。まずは、「風が吹き動かす」という意味です。この意味で使われる場合には、"rattle"や"fuel"という単語で訳されます。
- The wind rattled the door(ドアが風に煽られた)
- The fire was fueled by the strong winds and spread rapidly(強風に煽られて火は急速に燃え広がった)
- intensify consumers' desire to buy a product(消費者の購買意欲を煽る)
- arouse players' competitive spirit with a prize(賞金を出して選手の競争心を煽る)