「ボキャ貧」とは?
「ボキャ貧」とは、「ボキャブラリーが貧困」の略で、語彙量が少ない状態、またはそのような人のことを指します。
他人とのコミュニケーションにおいて、「ヤバイ」「すごい」「マジで?」などといった短くて単純な言葉ばかりが反射的に出てきてしまったり、「ソレってあの……つまりアレだよね」などと、自分の気持ちを適切に表す言葉が出てこなかったりする人は、「ボキャ貧」かもしれません。
主に若者に対して使われることの多い「ボキャ貧」ですが、最近では人生経験が長い大人でも当てはまる例があるようです。「もしかして自分のことかも」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「ボキャ貧」の由来
この言葉の由来は、1992年から1999年までレギュラー放送され、さらに2008年まで特番放送されていた「ボキャブラ天国」というバラエティ番組まで遡ることができます。
有名なことわざ、歴史上の出来事や人物名など、語句の一部分をもじって改変したネタを「ボキャブった」ネタと呼び、視聴者から寄せられた「ボキャブった」作品を出演者が品評する、というのが主な内容でした。
「ボキャブラ」「ボキャ天」などと呼ばれたこの番組は多くの視聴者に親しまれ、「ボキャブラリー」という言葉を広く認知させることになりました。
「ボキャ貧」の誕生
そして1998年。当時内閣総理大臣だった小渕恵三氏が、「自分には語彙量が少ない」と卑下する意味で「ボキャ貧」と発言したことでこの言葉は一気に有名になり、その年の新語・流行語大賞「特別賞」に選ばれるなど、国民的な知名度を獲得するに至りました。
なお、英語「Vocabulary (名詞)」の意味は以下の通りです。
- 語彙、用語、用語範囲
- 単語集、簡単な辞書
なぜ「ボキャ貧」になってしまうのか?
人はなぜ「ボキャ貧」に陥ってしまうのでしょうか?その原因となる要素は数多くありますが、ひとつの大きな原因として、ここ数年の間に急速に利用者が増えたSNSの影響があります。
文字数制限のあるTwitterでは、自分の気持ちをごく短く言い表したり、ありふれた表現で代用する習慣が身についてしまいがちです。またLINEでは、言葉にしにくい複雑な感情をスタンプに代弁させるようなことも簡単にできてしまいます。
加えて、SNSに代表される文字文化においては、短くても意味が通じるネットスラングや定型表現が流行することが常であり、「わざわざ自分の言葉にしなくても伝わる」という土壌が生み出される傾向が強いのです。
「ボキャ貧」の何がいけない?
「ボキャ貧」でも、自分の言いたいことが相手に伝わっていればそれでいいのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
ここで、有名な格言をひとつご紹介します。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。
~マザー・テレサ~
マザー・テレサは、言葉はいずれ行動になると警告しています。すなわち、扱える言葉が少ないということは、それだけ行動の選択肢が少ないということです。
いつも同じ言葉に頼っている人は、いつも同じ考えのもと、いつも同じ行動を繰り返すことしかできなくなるかもしれません。そして、いつしかそれがその人の人生になってしまうのです。
「ボキャ貧」から抜け出すために
では、「ボキャ貧」から抜け出すにはどうしたらいいのでしょうか?方法は大きく分けて、二つあります。
第一に、本を読むなどして「他人の言葉に触れる」ことです。実際に誰かと話してみるのも効果的ですが、プロが執筆した本には「読者に伝えたいこと」がわかりやすくまとめられています。筆者が自分に何を伝えたくてその言葉を選んだのか、考えながら読むことで、自然と多くの語彙が身に付きます。
第二に、「比喩を考えてみる」ことです。人間の脳には、きれいなものを花に例えるような「連想力」がもともと備わっています。最初はありきたりの定型句でも構いません。目に見えたもの、頭に浮かんだ言葉について、意識して連想力を働かせてみることで、だんだんと物事に対して複数の視点、思考、語彙を持てるようになります。
「ボキャ貧」まとめ
語彙を充実させることを、単に「表現力が豊かになる」という意味に受け取っている方もいらっしゃるかもしれませんが、もう一歩踏み込んで考えてみてください。
今の自分では知り得ない、未知の知識・思想・文化などを取り入れるためには、たくさんの語彙が必要なのです。
もしあなたが「自分もボキャ貧かも」と思い当たったのであれば、今日からでも遅くありません。ちょっと気になった言葉を検索欄に入力してみる、それだけのことでも、きっと日々の生活が変わってくるはずです。