「別離」の意味や使い方
「別離」は「べつり」と読みます。『広辞苑』には「別れること。別れ。離別。」と載っています。「別離を悲しむ」というように使います。
「別離」に似た意味の言葉
「別離」によく似た言葉に「離別」があります。いずれも同義の熟語ですが、「別離」が名詞としてのみ使用されるのに対し、「離別」は名詞としてだけでなく、サ行変格活用(~する等)で動詞としても使用可能です。
また「別」と「離」。たった二つの漢字でも、どちらが先に来るかで印象が微妙に変わります。たとえば「離れる」という言葉には「距離を置く」「離縁する」といった能動的な意味が含まれますが、「別れる」の持つ意味の多くは「離れて遠くなる」「生き別れ、または死に別れとなる」といった受動的なものです。
したがって「離」が先にくる場合、ある程度みずからの意思が反映されているイメージ。反対に「別」が先だと、意思とは関係なく離れ離れになってしまうような状況が連想されるのです。実際に、「離別」は離婚を意味する場合もあります。このあたりの要素は、「離別」だけが動詞として使えることにも関連しそうです。
その他の「別離」に似た意味の言葉としては、「分立」「分離」「隔絶」などが挙げられます。
「別離」に関連する英語
「別離」を意味する英語の言い回しとしては、「feel sad」や「part from」があります。「別離を悲しむ」は「sorrow at parting」となりますが、やや固い、格式ばった表現のようです。死別の場合は「失う」にあたる「lose」という表記になります。
- I parted from him at the corner.(私は角で彼と別れた)
- I lost my parents early in life.(私は両親に早く死に別れた)
仏教用語の「愛別離苦」
仏教用語には「愛別離苦(あいべつりく)」というものがあります。「愛するものと別れ、離れなくてはいけない苦しみ」という意味です。
仏教の教えの根幹に、人間が生きる限り逃れられない「四苦八苦」があり、「愛別離苦」はその内の一つです。親子、兄弟、夫婦、いずれの関係性でも別れは必ずやってくるもので、回避することは不可能です。
その耐え難い苦しみを克服する精神を手に入れるために、宗教者たちは想像を絶する修行を行ってきました。「愛別離苦」は、そうした宗教の厳しさを実感させられる、貴重な言葉のひとつと言えるかもしれません。
「別離」と人生
中国は唐の時代に、于武陵(うぶりょう)という詩人がいました。五言絶句(5字4行で構成される詩)『勧酒(かんしゅ)』が有名で、日本でも井伏鱒二が名訳を付けたことで知られています。最後の行のフレーズは特に、聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。
勧君金屈巵 (この杯を受けてくれ)
満酌不須辞 (どうぞなみなみ注がしておくれ)
花發多風雨 (花に嵐のたとえもあるぞ)
人生足別離 (さよならだけが人生だ)
于武陵『勘酒』より 訳・井伏鱒二
これは「愛別離苦」の新しい形とも言えますね。どうせ離れてしまうとわかり切っていて、いつも覚悟している。しかしそんな深刻な問題は爽やかに受け流してしまって、「出会いを大切にしよう」という意味です。こんな風な生き方ができたら、最高に粋で格好いいですね。
「別離」というタイトルの作品
「別離」は我々にとって、身近で大きなテーマです。そのためか、「別離」をタイトルにした映画やドラマ、歌曲なども多くあるようです。
2011年にはイランの映画『別離』が公開されました。その内容は、テヘランを舞台に、離婚やアルツハイマー病の父の介護といった家庭問題に端を発し、刑事事件に発展するというミステリー仕立ての人間ドラマ。
第61回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品され、最高賞である金熊賞の他、女優賞、男優賞の2つの銀熊賞の計3部門を受賞。第84回アカデミー賞では、イラン代表作品として外国語映画賞を受賞したほか、脚本賞にもノミネートされた作品です。
また2018年には中国で、『下一站別離(次に立ち去ってはいけない)』が放映され人気ドラマとなりました。こちらは、リアリズムと結婚をテーマにした作品です。