「注ぐ」の読み方
「注ぐ」には二つの読み方があります。まず一つ目は、「そそぐ」です。室町時代ごろまでは「そそく」とも読まれていましたが、現代では「そそぐ」が一般的です。
ちなみに「そそぐ」と読む場合は「灌ぐ」とも書きますが、こちらに関しても「注ぐ」が一般的です。二つ目の読み方は「つぐ」です。
「注ぐ」の意味
漢字だと読み方が紛らわしいので、ここからは一部を平仮名で表記します。「そそぐ」は細かく分けると、以下のように複数の意味を持っています。また「つぐ」と読む場合は大抵、五つ目の意味を示します。
- 水などが流れ込む、流れ入ること
- 雨などが降り掛かること
- 涙を流すこと
- ある事柄に集中する、そちらに視線や意識を向けること
- 液体などを入れ、容器を満たすこと
「注ぐ」の使い方
上述の通り「注ぐ」は紛らわしい言葉ですが、何を指すのか、もしくは状況によって、ある程度は読み方や意味を限定できます。
「海にそそぐ川」
これは一つ目の意味で、海に川の水が流れ込む、流れ入ることを表します。
「雨が降りそそぐ」
これは二つ目の意味で、雨が降っていることを表します。「降りそそぐ」の場合、ただの「降る」よりもニュアンスが強めです。
ぽたぽたと数滴の雫が降る程度では「降りそそぐ」と言わず、さらさらと、あるいはザアザアと広い範囲に雨が降っているとき、「降りそそぐ」が使われやすいです。
「花に涙をそそぐ」
これは三つ目の意味で、花の上に涙を零す、というようなことです。こういった表現は、漢文や小説などで見かけます。現代の話し言葉としては、あまり使われないかもしれません。
「視線をそそぐ」
これは四つ目の意味で、注目する、興味をもって見ることです。「視線をそそぐ」と似た使い方としては、「情熱をそそぐ」や「力をそそぐ」や「意をそそぐ」などが挙げられます。どれも集中や、その方に何かを向ける部分が共通しています。
「ジュースをコップにそそぐ、つぐ」
これは五つ目の意味で、コップという容器をジュースで満たす、コップにジュースを入れることです。この場合は「つぐ」も使えます。
どちらを使っても正しいのですが、「お酒をつぐ」や「客人のコップが空なので、お代わりをつぐ」というように多く使われるので、どちらかと言えば「つぐ」の方が一般的かもしれません。
「注ぐ」を含むことわざなど
「注ぐ」を含むことわざなどには、「火に油をそそぐ」や「満面朱をそそぐ」があります。
「火に油をそそぐ」
「火に油をそそぐ」とは、勢いよく燃えている火に油を加えると、更に勢いが増すことを表します。そこから転じて、何か勢いのあるものに、更に勢いを加えることのたとえです。
この言葉は望ましくない結果に使われます。たとえば誰かが激しい口論をしていたとして、落ち着かせようと自分が意見し、その結果として余計に口論が激しくなったとき、「火に油を注いでしまった」という風に表現します。望ましい結果や、単に勢いが増すことへの使用は間違いなので、注意が必要です。
「満面朱をそそぐ」
この言葉は「まんめんしゅをそそぐ」と読み、怒ったり恥ずかしがったりして、顔を真っ赤にすることを表します。
「そそぐ」のどの意味を指すのか曖昧ですが、満面とは顔全体のことです。そして朱とは赤色、ここでは原因である血を表します。よって「顔全体に血が流れ入る、血液が集中する」と解釈した場合、一つ目や四つ目の意味に通じます。
「注ぐ」の類義語
「注ぐ」の類義語には、「汲む」や「射す」などがあります。
「汲む」
この言葉は「酌む」とも書き、複数の意味を持っています。まず一つ目は、液体をすくい取ることです。「井戸から水を汲む」というように使われます。
二つ目は飲み物などを容器に入れることです。こちらは「お茶を汲む」というように使われます。三つ目は考え方などを継ぐことです。「〇〇派の流れを汲む」というように使われます。
四つ目は他人の事情や気持ちなどを、解釈することです。「相手の気持ちを汲む」というように使われます。「注ぐ」の類義語としては、二つ目の意味が近いですね。
「射す」
この言葉は常用外なのですが、「光が射す」などの形でよく使われています。「光が射す」とは光が降りそそぐ、光が照り込むことを表すので、「そそぐ」の二つ目の意味に通じています。