「死人に口なし」とは?
「死人に口なし」とは「死んだ人間は何も話せないこと」、「死んだ人間に罪をかぶせても何の釈明もできないこと」といった二つの意味を持つ言葉です。「死体(死骸)に口無し」は誤りですので注意が必要です。
死んでしまった人はもちろん喋ることができません。たとえ訊きたいことがあっても当人が死んでしまっていたら、尋ねることはできません。死人から証言を取ろうとしても取れないのです。
死んだ人は話すことができないために無実の罪を着せられても弁論ができません。「死人に口なし」という言葉は「死人が生きているものから好き勝手に利用されてしまうこと」を表しています。大切なことはしっかりと記録に残しておくべきだという教えの言葉でもあります。
「死人に口なし」の使い方
「死人に口なし」はそもそも、「死んでしまった者は反論したり抗議したりすることは出来ないのだから、死者に罪を着せたり責任を負わせたりするべきではない」という意味で使われる言葉でした。現在では死人は口がきけないことを利用し罪を着せたり、口封じのために殺したりするときなどに使われます。
また刑事ドラマなどでは「事件の手がかりを掴みたいが、死人から話を聞くわけにもいかない」といった状況で使われることがあります。
昔は指紋などから証拠を得ることができないので、被害者の証言というのが重要でした。そのため犯人にとっては、被害者に生きていられると都合が悪いのです。時代劇では証拠を残さないために相手を殺すシーンで、「死人に口なし」が度々使われます。
- 「目撃者は始末してしまおう。死人に口なしだ」
- 「死人に口なしで、真相は永久に闇の中である」
- 「死人に口なしとばかりに、自分の罪を死人のせいにする」
- 「死人に口なしなのをいいことに、彼は亡くなった妻の悪口ばかり言っている」
「死人に口なし」の英語表現
「死人に口なし」を英語で表すと"Dead men tell no tales"になります。"tale"は「話、物語」の意味を持つ単語です。なので「死んだ人は話さない」という意味になり、「死人に口なし」を表現することができます。ちなみに"men"は"man"の複数形ですが、性別関係なく人間全体を指して使われます。
「死人に口なし」の類語
「死人に口なし」の類語には「死人に妄語」という言葉があります。「死人に妄語」とは「うそを言い立てて、死人に罪を背負わせること」、「死人に無実の罪を着せること」を意味する言葉です。
死人が話さないのをいいことに罪をなすりつけるという「死人に口なし」に近い意味を持っています。また同じような意味で「死人に罪あり」という言葉もあります。
「死」に関連することわざ
「九死に一生を得る」
「九死に一生を得る」とは「ほとんど命が助かりそうもない、今にも死んでしまいそうな状態からかろうじて助かる」という意味のことわざです。
「九死」とは九度の死のことではありません。九分の「生」を捨てて、残りの一分の「生」を拾う幸運のことを言います。
「死に花を咲かせる」
「死に花を咲かせる」とは「立派に死んで、死後に誉れを残す」「死んでかえって誉れが増す」という意味です。死んでも名を馳せるような立派な人間になりたい、どうせ死ぬなら最後に成功を収めたいといった思いを込めて使われる言葉です。
「死に馬に鍼をさす」
「死に馬に鍼(はり)をさす」とは「何の効果もなく、無駄であること」を例えることわざです。すでに死んでしまった馬に鍼を施して治療しても、生き返ることはなく、無駄であることから出来た言葉です。