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「人の褌で相撲を取る」の意味
「人の褌で相撲を取る」は、自分の物は使わないで、他人の物を利用し、自分の都合のいいように目的を果たす、という意味です。人に便乗して、都合よく利益を得ようとすることの例えです。
「褌」というのは、一般的には男性用の下着のことを言いますが、このことわざにおける「褌」は単なる下着ではなく、お相撲さんが腰に締める「まわし」のことです。人のまわしを借りて相撲を取る、ということです。
「人の褌で相撲を取る」の例文と使い方
- 新製品のキャッチコピー、山田さんの案が採用されたんですね。あれって実は後輩のメモから一つ拝借したものらしいですよ。人の褌で相撲を取るなんて、感心しませんね。
- 田中君、先週の試験で満点を取ったそうだよ。授業に出席もしないで、鈴木さんのノートを借りてたのに。人の褌で相撲をとっても、自分のためにならないのにね。
欲が深い、抜け目がない、ちゃっかりしているなど、あまりいいイメージではない場合に使われるようですね。「褌」に相当するものとしては、「他人の物」だけでなく「他人のアイデア」なども使うことができます。また、「相撲」は「角力」という漢字が使われることもあります。
「人の褌で相撲を取る」の解釈
「人の褌で相撲を取る」は、相撲を取る際に不可欠な褌を他人の物を借りて済ませてしまう、ということから、自分のものは使わずに虫がいい、利益だけ得て感心できない、という解釈がほとんどです。
しかし、『岩波ことわざ辞典』には、以下のような記載がありました。
この説は有力なものではないようですが、「虫がいい」や「感心できない」という解釈と真逆の「智者」という解釈があったとは興味深いですね。
「人の褌で相撲を取る」の類語
「人の褌で相撲を取る」には、多くの類語が見られますので、いくつかご紹介します。
- 人の牛蒡(ごぼう)で法事する
- 人の提灯(ちょうちん)で明かり取る
- 人の太刀(たち)で功名する
- 舅の物で相婿(あいむこ=姉妹の夫同士)が互いにもてなす
- 他人の念仏で極楽参り
- 人の賽銭で鰐口(わにぐち)叩く
「鰐口(わにぐち)」とは、神社仏閣のお堂の前に太い綱と共につるしてある丸形の鈴の事です。お参りの時に、カランカランと鳴らすやつです。つまり、自分ではお賽銭をお供えせずに、他人様がお供えしたお賽銭でお参りをする、ということです。罰(ばち)が当たりそうですね。
「人の褌で相撲を取る」の英語表現
- One beats the bush, and another catches the birds.(甲が藪を叩き、乙が鳥を捕まえる)
- To plough with another's calf.(他人の牛で耕作する)
- An ape takes the chestnuts out of the fire with the cat's claw.(猿が猫の足を用いて火の中から栗の実を拾い出す)
「人の褌で相撲を取る」の諸外国での表現
- 他人の餅で正月を送る(韓国)
- 他人のパンで親の追善供養をする(ブルガリア)
- 他人の鼻を借りて息をする(タイ)
「褌」が登場することわざ
現代では「褌」を日常的な下着として使用する方は少なく、馴染みがないという方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ことわざには他にも「褌」が登場するものがありますので、ご紹介します。
- 褌かいても義理はかくな(世の中でうまくやっていくには、たとえ褌を欠いたとしても、義理を欠くことは絶対にしてはいけない)
- 褌には短し手拭いには長し(「帯に短し襷に長し」と同様、中途半端で役に立たないことの例え)