「可愛い子には旅をさせよ」の意味
「可愛い子には旅をさせよ」は、愛する子どもは手元で甘やかさず、辛い経験をさせて世の中の真相に触れさせた方がいい、という意味です。
昔は交通が現代ほど発達していませんでした。また旅先には知っている人も頼れる人もいません。「旅は憂いもの辛いもの」ということわざがあるように、旅には心配や苦労がつきものである、というのが昔の人たちの通念でした。そこで、苦労の多い旅をさせ、世の中の苦しみや辛さを経験させた方が将来のためになる、と考えられたのです。
また、そこから転じて現在では「旅」は「旅行」というだけでなく、「生家を離れて世間に出て経験を積むこと」という意味で使われています。
「可愛い子には旅をさせよ」の例文と使い方
- 息子がイギリスの全寮制の高校に通いたいと言う。母としては心配でたまらないが、可愛い子には旅をさせよと言うから、笑顔で送り出そうと思う。
- 泣き叫ぶ娘を、初めて二時間の一時保育に預けてきた。親も子も辛いけれど、可愛い子には旅をさせよだ。
可愛い子はとかく甘やかしてしまいがちです。しかし、かわいいからこそ近くで甘やかすことなく、世に出して苦労させる、という場合に使われていますね。また「可愛い子には旅をさせよ」は、「いとしい子には旅をさせよ」「思う子に旅をさせよ」「可愛い子には旅をさせろ」も同じ意味として使われます。
「可愛い子には旅をさせよ」の誤った使い方
- 可愛い子には旅をさせよと言うから、娘が友人と行くハワイへの卒業旅行、お金を出してやろうと思ってるの。
- お父さん、夏休みにパリへ観光に行きたいから、おこづかいちょうだい。可愛い子には旅をさせよって言うでしょ?
旅が一般化し、辛いものというより楽しいものとして認識されるようになった昨今では、こうした使い方をされるケースも見られます。しかし、「可愛い子には旅をさせよ」は、物見遊山のために費用を与える、費用をねだる、という場合には使いませんので、気を付けてくださいね。
「可愛い子には旅をさせよ」の用例
「可愛い子には旅をさせよ」は、小説にも登場していますので、二例ご紹介します。どちらの作品でも「旅をさせろ」という形が用いられています。
中勘助『銀の匙』
島崎藤村『夜明け前』第二部下
「可愛い子には旅をさせよ」の類語
- 獅子の子落とし
獅子は、子どもがうまれてから三日も経つと、谷底へ突き落し、生き残ったものだけを育てる、という俗説があります。そこから、子どもに苦難を与えて才能を試すこと、また厳しく育てることの例えとして使われる表現です。
また「可愛い子には旅をさせよ」と同じように「可愛い子」から始まる表現をいくつかご紹介します。
- 可愛い子には灸をすえ、憎い子には砂糖をやれ
- 可愛い子は頭をはれ
- 可愛い子は打って育てろ
地方によって少し異なった表現もあるようです。
- 【香川】可愛い子には荒菰(あらごも:粗く織ったむしろ)を巻け
- 【和歌山】可愛い子には他所をさせ
- 【静岡】可愛い子には冷や板を踏ませよ
- 【山梨】可愛い子には普請(ふしん:労役)をさせよ
- 【新潟】可愛い子には薄着をさせよ
「可愛い子には旅をさせよ」の英語表現
- Spare the rod spoil the child.(鞭を惜しんで、子どもをだめにする)