「前門の虎後門の狼」とは?
「前門の虎後門の狼」は、「ぜんもんのとらこうもんのおおかみ」と読みます。一つの災難から逃れることができても、まだそのあとから次の災難が襲ってくることをたとえたことわざです。四字熟語の「前虎後狼(ぜんここうろう)」は同じ意味です。
「前門の虎後門の狼」例文
- 今日の夕飯はカレーライスの予定だったのに、肉を買い忘れた。ちくわで何とかしようと思ったが、買い置きのカレールーも切らしていたことに気づいてしまった。「前門の虎後門の狼」とはこのことか。
- 飲むと愚痴ばかりの上司から、なんとか忘年会の二次会に連れていかれないよう逃げてきたが、家に帰ったら深夜の帰宅に怒った妻が待っていた。「前門の虎後門の狼」の状況だ。
- 数学の追試にやっと受かったと思ったら、英語の追試も待っていた。まさに「前門の虎後門の狼」だ。
- 風邪がやっと治ったのに、しばらく寝込んでいたので腰が痛くなってしまった。「前門の虎後門の狼」だ。
「前門の虎後門の狼」由来
中国の元の時代の学者、趙弼(ちょうひつ)が書いた『評史(ひょうし)』 に、次のような文があります。
前門は前の門、表門を指し、後門は後ろの門、裏門を指します。この文の意味は、表門で恐ろしい虎の侵入をやっと防いだのに、裏門からはやはり恐ろしい狼が入ってくる、ということです。これが、「前門の虎後門の狼」のことわざの由来とされています。
「前門の虎後門の狼」類義語
- 一難去ってまた一難(いちなんさってまたいちなん)
- 虎口を逃れて竜穴に入る(ここうをのがれてりゅうけつにいる)
- 禍去って禍また至る(わざわいさってわざわいまたいたる)
- 火を避けて水に陥る(ひをさけてみずにおちいる)
「前門の虎後門の狼」英語での表現
- A precipice in front, a wolf behind.
- between the devil and the deep blue sea
- between Scylla and Charybdis
Scylla(スキュラ) もCharybdis(カリブディス)も、ギリシャ神話に出てくる海に住んでいる怪物の名前です。それぞれ、イタリアの航海の難所にその名前がつけられています。
- jump out of the frying pan into the fire
frying panはフライパンのことです。
虎と狼が含まれる他のことわざ
虎狼より人の口恐ろし
「とらおおかみよりひとのくちおそろし」と読みます。
虎や狼のような凶暴な獣から身を守る方法はあるが、人の口から出てくるうわさや陰口、悪口から身を守ることはたやすいことではない、という意味のことわざです。「虎の口より人の口恐ろし」も同じ意味です。
虎狼より漏るが恐ろし
「とらおおかみよりもるがおそろし」と読みます。
凶暴な虎や狼よりも、自分の家の雨漏りのほうが恐ろしい、という意味と、虎や狼よりも、自分の秘密が漏れて広まるほうが恐ろしい、という意味の二つがあります。
「前門の虎後門の狼」まとめ
困難な状況をなんとか乗り切ったと思ったら、また次の困難が待っていた、という場面は日常でもよくあるものです。ことわざになるくらい普通にあることだと思えば、少しは気が楽になるかもしれません。
自分の置かれた状況を冷静になって見てみれば、虎や狼に襲われるほどの大変なことではなかった、なんとか乗り越えられるかも、と気がつくこともできるかもしれませんね。