スラックスの定義
まずスラックスの語源は英語のslackからきており、ゆるい、たるんだという意味があります。このことからスラックスとはもともとゆったりしたシルエットのスポーティーな長ズボンを指して呼称していましたが、現代では長ズボン全般について"スラックス"と呼ぶことが一般的となっています。
とくにスーツや制服などの特定の上着と合わせて着るパンツのことをスラックスと呼ぶことが多くなっています。どっしりしたジャケットにスラックスというのが、昔のおじさんがよく着ているスタイルというイメージがあり、スラックスはファッションアイテムというよりもダサいものというイメージもありました。
スラックスは長ズボン全般についての名称ですが、基本的なディテールとしては、サイドに付いたフロントのポケットやおしりの玉縁ポケット、そしてウエストにはタックがありセンタークリース(センターラインについた折り目)のついたものが多くなっています。
スラックスの歴史
実は長ズボンの歴史は人類史の中ではまだ浅く、中世までは半ズボンやタイツ、スカートが主流となっていました。以下ではスラックスが広まっていった歴史について解説していきます。
フランス革命によるファッションの変化と既製服の発展
長ズボンを使ったスーツスタイルや着こなしが主流になったのは、1789年前後のフランス革命時期とも言われています。この頃にはファッション雑誌のもとになるような図解入りのファッション年鑑ができ、パリのファッションが地方やヨーロッパ各地に広まっていきました。
また産業革命などにより既製服も広がり始め、1800年代には中流階級や労働者階級にまでスーツが普及し長ズボンを穿く慣習が広がりました。日本でも1800年代中盤から後半にスーツが入ってきたと言われ、スラックスを穿く文化が徐々に定着していきました。
ココ・シャネルによる影響
1900年代になると戦争などの影響もありファッションスタイルも大きく変わっていきます。その中でココ・シャネルの登場が女性のスタイルを一変させました。シャネルはこれまでの女性はスカートを穿くものという意識を覆し、女性のパンツスタイルを世に広めていきました。
現在では男女関係なくスラックスをファッションアイテムとして着用し、さまざまな職業での制服としても使われるようになりました。また本来のゆるいシルエットではなくスタイリッシュなシルエットが現在では主流となっており、スラックスも歴史や慣習に合わせて変化してきています。
スラックスの着こなし
スラックスはスーツのパンツとして使っている方も多いと思いますが、現在ではカジュアルファッションでも多く活用されています。
以下ではスラックスの着こなし例を見ていきたいと思います。
こちらはスラックスを使った王道なキレイめスタイル。コートやローファーを合わせた落ち着いたスタイルですが、ギンガムチェックシャツとボルドーの差し色を使ったベストではずしているのがかっこいいですね。
続いてはスラックスをかなりカジュアルに落とし込んだレディーススタイル。スラックスの落ち着いた色と白のケーブルニットとのコントラストが目を引きます。カジュアル感の強いキルティングジャケットを肩にかけ、スラックスでもかしこまり過ぎないリラックスタイルの好例です。
最後はかなり個性的なスラックスの着こなしです。大胆なチェックのスラックスをロールアップして足元を強調しています。トップスのゆったりしたシルエット、帽子や靴下のカラー使い、スラックスとシューズのバランスが絶妙で、個性を最大限引き出せているスタイルですね。
まとめ
スラックスとは本来ゆるめでスポーティーな長ズボンでしたが、現代ではさまざまなシルエットが登場し男女関係なく着用されています。スーツや制服として活用され、現在ではなくてはならない衣服となっています。
若者の間でも新しいファッションスタイルの一部として取り入れられ、ジーンズと並ぶパンツスタイルの代表となりました。さまざまなシルエットやデザインが取り入れられ、老若男女楽しめるパンツスタイルとしてこれからも発展し続けるでしょう。