「手塩にかける」の意味と用例
「手塩にかける(てしおにかける)」は、「手塩に掛ける」とも書くことができる慣用句で、日常生活やビジネスの場面においても聞く言葉です。
「手塩にかける」は、みずから気を配りながら世話をする、みずから面倒をみて大切に育てるを意味します。きめ細かな世話をするばかりでなく、他人まかせにしないで自分で行うということが重要です。
「手塩にかける」の例文
- 家庭菜園で手塩にかけた野菜のほうが、購入した野菜よりもおいしく感じる。
- 手塩にかけた息子が、海外転勤で遠くに住むことになり寂しくてたまらない。
- 手塩にかけて育てた盆栽が、コンクールで特別賞をとったときは感無量だった。
- 新入社員を手塩にかけて育てたかいがあって、彼はプロジェクトのリーダーになるまで成長した。
「手塩をかける」は誤り
ときどき、「手塩にかける」を、間違って「手塩をかける」と言う人がいます。手塩をかけた植木、手塩をかけて育てた孫などは誤用の表現ですので、正しい使い方ができるように注意しましょう。
「手塩にかける」の由来
どのような塩の使い方をするかが、「手塩にかける」の由来に関係しています。まずは、手塩の意味を知ることが大切でしょう。
「手塩」は、もともとは清めの塩として、膳の不浄をはらう目的で小皿に盛ってそえた塩を指しました。そののち、食膳に付けた少量の塩を「手塩」と呼ぶようになりました。
食膳にそえられた塩は、自分で料理の味の調整をするために使うもので、それが転じて、みずから面倒をみることを「手塩にかける」と表すようになったとされています。
「手塩」の起源
「手塩」の起源は室町時代と言われています。浄化ではなく料理の味加減・塩加減の意味で「手塩」を使いはじめたのは、江戸時代からのようです。
「手塩にかける」の関連語
「手塩にかける」の類語
【丹精する】/【丹誠を込める】
「丹精」の意味は、心を込めて物事をすること、「丹誠」の意味は、真心・嘘いつわりのない心です。「丹精して育てた植木」「丹誠を込めて祈願する」のように使います。
【丹念に育てる】
「丹念」の意味は、心を込めて丁寧にすること、真心を込めて念をいれることです。「丹念に育てられたブランド牛」のように用いられます。
【手間隙(てまひま)をかける】
手間隙(てまひま)の意味は、労力と時間です。「手間隙をかけて作った料理」のように使います。
【精魂を込める】
「精魂」の意味は、たましい、精神です。「精魂を込めて造った日本酒」のように用いられています。
「手塩にかける」の英語表現
「手塩にかける」の英語表現は文脈により異なります。「大事に育てる」という意味合いの表現の一例は次の通りです。
- 英語:She brought up her only daughter with great care.
- 訳語:彼女は一人娘を手塩にかけて育てた。
- 英語:I brought up my children with affection.
- 訳語:私は子供たちを手塩にかけて育てた。
手塩皿・御手塩(おてしょ)
手塩皿・御手塩(おてしょ)の意味は、小さく浅い皿、手塩を盛るのに用いる小皿です。御手塩は、主に女性が用いる言葉とされていますが、年配の男性の中には使う人もいます。現在は、しょう油や香の物などのために使うことが多い皿でしょう。
「手塩にかける」の豆知識―おにぎり
上で説明した「手塩にかける」の由来は、一般的に言われている説ですが、以下に紹介するのはまた別の説です。
「おにぎり」を作るには、濡れた手に塩をつけて、ご飯をのせてにぎりますね。この塩が「手塩にかける」の由来という説もあります。
おいしいおにぎりを作るためには、塩の加減、ご飯をにぎる力の加減が大切です。また、お母さんのおにぎりに代表されるように、手作りのおにぎりをおいしく感じるのは、作った人の想いが込められているからでしょう。
「手塩にかける」という言葉は、人を育てるときによく用います。人を育てるのに難しさを感じたら、いろいろと加減をみながら想いを込めて手作りする「おにぎり」を、思い浮かべてみてはいかがでしょうか。