「一寸の虫にも五分の魂」の意味
わずか一寸しかないような小さな虫にも、その半分の五分にあたるくらいの魂を秘めている、という意味です。人は誰でもその人なりの意地や根性を持っているのだから、決して侮ったり馬鹿にしたりしてはいけない、ということの例えです。
「一寸(いっすん)」とは尺貫法の長さで一尺の十分の一、すなわち約3.03センチメートルです。長さがわずかなものであることの例えとして用いられています。「五分(ごぶ)」は一寸の半分の長さです。一寸の虫にその半分という身体に合わないほどの大きな魂があると言っています。
また「魂」は、亡くなった人の霊という意味ではなく、何かを成し遂げようする強い気持ち、精神、気力などを意味します。
「一寸の虫にも五分の魂」の使い方と例文
では「一寸の虫にも五分の魂」がどのように使われているか見てみましょう。
「一寸の虫にも五分の魂」の用例
浄瑠璃『天智天皇』には以下のような表現があります。
「一寸の虫にも五分の魂」は、上の例のように「一寸の虫に五分の魂」という形でも表現されます。また「一寸の虫に五分魂」、「一寸の虫にさえ五分の魂」という異表現もあります。
「一寸の虫にも五分の魂」の例文
- 相手が子供だからと言って、手を抜いてはいけないよ。一寸の虫にも五分の魂というからね。
- 去年の成績は、相手チームが準優勝、我がチームは初戦敗退。でも、練習量も気持ちも負けていないはず。一寸の虫にも五分の魂があるというところを見せてやろうじゃないか。
- 社内コンペでは先輩の作品がダントツの最有力候補だと噂されているが、私もこの仕事を始めて15年。一寸の虫にも五分の魂はあるのだ。
一番上の例文では、相手を侮ってはいけないという戒めとして使われています。下の二つの例文は、自分にも意地があるという事を表現するのに使われています。
「一寸の虫にも五分の魂」の類語
「一寸の虫にも五分の魂」には、「〇〇にも〇〇」という形で、同じような意味を持つ表現がいくつかありますので、ご紹介します。
- 小糠(こぬか)にも根性
- 蛞蝓(なめくじ)にも角
- 金平糖にも角
- 痩せ腕にも骨
生き物だけではなく、小糠(玄米を精米するときに表皮が細かく砕けてできる皮)や、金平糖(表面が凸凹している砂糖菓子)なども例えに使われていますね。また形は少し違いますが、以下のような表現もあります。
- 匹夫(ひっぷ)も志を奪うべからず
匹夫とは身分の低い男、なんでもないただの男を言います。どんな人に対しても、決めた志は外部からの圧力によって曲げさせるわけにはいかない、人の志は尊重するべきだという意味です。
「一寸の虫にも五分の魂」の英語表現
- Even a worm will turn.(虫でも向かってくる)
- The fly has her spleen and the ant her gall.(ハエにも怒りがあり、アリにも遺恨がある)
- Tread on a worm and it will turn.(虫を踏みつければ、虫は向き直ってくる)
英語表現でも、小さな虫が例えに使われていますね。
「一寸」のことわざ
「一寸」は、今では日常生活でよく使われる単位ではありませんが、ことわざの中にはまだ他にも用いられていますので、いくつかご紹介します。
- 一寸先は闇(すぐ先のことでも、将来のことは闇のようなもので、何が起こるか全くわからない)
- 一寸の光陰を軽んずべからず(人生は短いのだから、たとえわずかな時間でも無駄にしてはならない)
「一寸の虫にも五分の魂」と同じように、一寸はほんのわずかな物事の例えとして用いられていますね。