「恩を仇で返す」とは?
「恩を仇で返す」とは恩を受けたにも関わらず、恩を与えてくれた人に対して感謝を表すどころか、かえって害になるような行為をすることを表すことわざです。
「恩を仇で返す」という言葉には「恩を受けたら恩で返すのが当たり前である」という考えが前提にあります。「恩」という言葉は恵のことであり、感謝すべき行為のこととされています。
「仇」は「あだ」と読み、ひどい仕打ちや恨みのことを言います。「仇」は単語では「かたき」とも読めますが、ここでは「あだ」なので、注意が必要です。
優しくしてもらったり、親切にしてもらったら感謝してお礼をするべきであるのに、かえって相手の害になる行為に及ぶ。「恩を仇で返す」とはそういう意味の言葉です。
「恩を仇で返す」の使い方
例を挙げると
- 「さんざんお世話になった人に恩を仇で返すようなことをする」
- 「彼の行為は恩を仇で返すようなものだった」
「恩を仇で返す」の英語表現
直接「恩を仇で返す」の意味から英語に直して使う表現と、同じような英語のことわざで表現する方法があります。
・"return evil for good"
・”return one's kindness with ingratitude”
直訳で「良い事をしたのに悪い事にして返す」という意味です。「恩を仇で返す」の意味合いが伝わります。ただどちらもやや形式ばった硬い表現になるので普段の会話で使うにはあまり適しません。
・"bite the hand that feeds one"
「エサをくれる人の手を噛む」という意味の英語です。日本語のことわざにもある「飼い犬に手を噛まれる」と近い表現になります。
「恩を仇で返す」の類語
「恩を仇で返す」の類語には恩に対してひどい仕打ちで返すという状況や場面をうまく表現した言葉がたくさんあります。ぜひ「恩を仇で返す」と一緒に覚えてみてください。
「忘恩の徒」
「忘恩の徒」とはお世話になった人に感謝する事なく、その恩を踏みにじるような人を指して言います。「恩を徒で返す」とも言います。
「ひさしを貸して母屋を取られる」
「ひさしを貸して母屋を取られる」とは一部を貸してしまったがばっかりに最後には全てを奪い取られること、好意につけ込まれてひどい目にあうことを意味しています。保護してあげた相手から仕打ちを受けるという意味もあり、「恩を仇で返す」の類語になります。
「後足で砂をかける」
「後足で砂をかける」は恩を返すどころか、去り際に相手の迷惑や害になる事をしたり、裏切ったりする事を例えて言う言葉です。
「恩を仇で返す」の対義語
「恩を仇で返す」の対義語は「迷惑な事をされたにも関わらず怨んだりせずに、反対に相手にいい事をしてあげよう」という寛大な心を持つ意味の言葉になります。
「仇を恩で報いる」
「仇を恩で報いる」とは「恩を仇で返す」とは反対に、恨むべき人に対してかえって情けをかけることという意味です。単純に「恩を仇で返す」をひっくり返した言葉のように思えますが、この言葉の歴史は深く、近松門左衛門の浄瑠璃『薩摩歌』にこの表現が登場するそうです。
「怨みに報ゆるに徳を以ってす」
「怨みに報ゆるに徳を以ってす」とはひどい仕打ちを受けても、仕返しをするのではなく、許しの心で温かく接するべきだという意味の言葉です。
「恩を以って怨みに報ず」
「恩を以って怨みに報ず」は怨みがある人に対して復讐したり、報復したりするのではなく、反対に恩を与えるくらいの気持ちで接することという意味があります。