「泣きっ面に蜂」の意味
泣いている顔を蜂が刺す、という意味です。不幸の上に不幸が重なることの例えです。
「泣きっ面に蜂」の使い方
- 娘が高熱を出し病院へ連れていく途中、車のタイヤがパンクしてしまった。泣きっ面に蜂のような目にあった。
- 先日の集中豪雨の影響で停電が続く中、大地震とは。泣きっ面に蜂といった心境だろう。
- 彼女に一方的に別れを告げられ落ち込んでいるところに、第一志望の会社から不採用の通知が届いた。まさに泣きっ面に蜂状態だった。
苦痛の上に苦痛が、困っていることの上に困っていることが起こっている状況を表すときに使われていますね。
「泣きっ面に蜂」の由来
「泣きっ面に蜂」は、江戸時代辺りから似た表現が登場しました。しかし、その言い回しはかなり変化があったと言われています。ここでは「泣きっ面に蜂」の由来を見ていきましょう。
江戸系いろはかるた
「泣きっ面に蜂」は江戸系いろはかるたに採用されたことでよく知られるようになったことわざです。いろはかるたにおける言い回しは、時代と共に変化が見られます。以下が各時代によく使われていた表現です。
- 江戸時代:泣く面を蜂が刺す
- 明治時代前期:泣き面を蜂が刺す
- 昭和:泣き面に蜂
ことわざ集
- 1797年『諺苑』:哭面(なきつら)を蜂が刺す
- 1850年ごろ『俗諺集成』:泣きつら蜂が刺す
- 1906~08年『日本俚諺大全』:泣面に蜂
「刺す」という動詞が省略され、現在と同じような「泣き面に蜂」という形が優勢になったのは、1900年代に入ってからのようです。また「泣きっ面に蜂」と「っ」が入った表現は、話し言葉を中心に使われてきたと言われています。
ちなみにいろはかるたの絵柄は、泣いている人と蜂というものが定番でした。また、いろはかるた以外で絵のある古い文献は、時太郎(北斎の戯作名)の『児童文殊稚教訓』(1801年)です。ある高慢な人物がご近所さんを訪問する途中、蛇を踏んで足をかまれ、その上蜂に顔を刺された場面が描かれています。
「泣きっ面に蜂」の類語
- 弱り目に祟り目
- 踏んだり蹴ったり
- 傷口に塩
- 腐れ目に爛(ただ)れ目
- 痩せ子に蓮根
- 転べば糞の上
- 降れば土砂降り
「弱り目に祟り目」や「踏んだり蹴ったり」、「傷口に塩」などは、「泣きっ面に蜂」と同じように、比較的なじみのあることわざではないでしょうか。それ以外にも多くの表現があるんですね。
「泣きっ面に蜂」の英語表現
英語では「不幸は決して単独では来ない」という言い方をします。色々な言い回しがあるようなので以下にご紹介します。
- Misfortunes never come singly.
- Misfortunes seldom come alone.
- One misfortune calls another.
- One misfortune rides upon another's back.
「泣きっ面に蜂」が例えを使っているのに対し、misfortune(不幸)という直接的な表現が用いられていますね。例えを使ったものでは、It never rains but it pours.(土砂降りしか降らない)という言い方もあります。
「泣きっ面に蜂」の各国での表現
日本以外の国では「泣きっ面に蜂」はどのように表現されているのか見てみましょう。
- 雪上加霜=雪の上に霜が降る(中国)
- 目病みに唐辛子の粉(韓国)
- 押しつぶされたあげくなぐられる(シベリア)
- 傾いだ木には山羊も跳び掛かる(ポーランド)
- 貧乏人がシャツを日に干せば雨が降る(コロンビア)
「泣きっ面に蜂」もかなり辛い状況ですが、「目病みに唐辛子の粉」や「押しつぶされたあげくなぐられる」などは、目も当てられないほど辛そうな様子が伝わってきますね。