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「朱に交われば赤くなる」の意味
人は交際する友人や身を置く環境によって良くも悪くもなるものだ、という意味です。「朱に近づけば必ず赤し」とも言います。
朱というのは印肉や漆器などに使われる、黄色味をおびた赤色の顔料の事です。少し触っただけでも染まってしまう事から、接する人の影響力の強さの例えに使われています。よい友人を選ぶこと、よい環境に身を置くことが大切であることを教えたことわざです。
「朱に交われば赤くなる」の使い方
現代では、よくないものに感化される場合に使われることも多いですが、善悪どちらの影響にも使うことができます。使い方の例を見てみましょう。
- 新たに塾に入ってきた生徒たちも、朱に交われば赤くなるで、どんどん成績がアップしてきた。
- 高校に進学し不良仲間と遊ぶようになってから、あの子は変わってしまった。朱に交われば赤くなるといったところだろうか。
- 昼休みの休憩室は悪口であふれていて疲れる。朱に交われば赤くなるというから、お弁当はやめて一人で外でランチをとることにした。
一つ目の例文はよい影響、下の二つの例文は悪い影響についてのものですね。
「朱に交われば赤くなる」の由来
「朱に交われば赤くなる」の由来は中国にあります。晋の時代の『傅玄(ふげん)』の「太子少傅箴(たいししょうふしん)」にこんな一文があります。
「朱に交われば赤くなる」は、これが少し形をかえたものだと考えられています。
日本国内の文献では、安土桃山時代のことわざ集『北条氏直時分諺留』に収録されているものが最古のもののようです。以前は日本でも「墨に近づけば黒し」と、対になった形で使われることも多かったのですが、今日ではほとんど「朱に交われば赤くなる」単独で使われています。
「朱に交われば赤くなる」の類語
- 麻に連るる蓬:曲がった蓬も真っすぐに伸びる麻の中に生えるとひとりでに真っすぐになる。
- 芝蘭の室に入る如し:霊芝と蘭という芳香の高い香草のある部屋に入っているとその香りが身に沁みつくように、立派な人と付き合っていると自然に感化されていい人になる。
- 水は方円の器に随う:水は容器の形に応じていかようにも変わる。それと同じように人は友や環境などに左右される。
上の二つは「朱に交われば赤くなる」とは違い、いい影響を受ける場合のみに使われています。
「朱に交われば赤くなる」の対義語
- 泥中の蓮:人が汚いというような泥の中でも蓮が清らかな花を咲かせるように、周囲の悪い影響に染まらず、清く正しく生きることやそのように生きる人の例え。
諸外国の「朱に交われば赤くなる」
「朱に交われば赤くなる」と同じようなことわざは多くの国にあります。そのいくつかをご紹介します。
タイ:白鳥といれば白鳥に、カラスといればカラスに
パキスタン:瓜を見て瓜は色づく
ミャンマー:狩人のそばにいれば狩人に、漁師のそばにいれば漁師に
タジキスタン:粉ひき所のそばを通ると粉まみれになる
他にもたくさんあります。例えは違いますが、世界共通の教えだとわかりますね。
「朱に交われば赤くなる」の英語表現
- He who touches pitch shall be befiled therewith.(瀝青に触れるものは汚れる)
- Who keeps company with the wolf will learn to howl.(オオカミと付き合うものは吠えることを覚える)
- The rotten apple injures its neighbor.(腐ったリンゴは隣り合わせのものをだめにする)
瀝青とは天然のアスファルトなどを言います。見た目はきれいですが、触ったら最後なかなか落ちないことから、このことわざの例えに使われています。