「マウンティング」の意味
みなさんは「マウンティング」という言葉を聞いたことがありますか?「mount」とは「またがる・乗せる」という意味の英語です。格闘技などで言う「マウントポジション」とは、相手を仰向けにして組み伏せ、その背中に馬乗りになった状態のことですね。
実は人間以外の動物も別の個体に馬乗りになることがあり、これを「マウンティング」あるいは「馬乗り行為」などと呼びます。動物がマウンティングする主な目的は“交尾”と“力関係の確認”ですが、後者にたとえて最近は「人が言動により自身の優位を示すこと」も「マウンティング」と呼ばれています。
職場でのマウンティング例
具体的にどういった言葉や行為が人間で言うマウンティングにあたるのか、例を挙げて確認してみましょう。職場においてよく見られるのが、業務遂行能力、つまり、仕事の出来に関するマウンティングです。
(同僚)
○○さんは偉いよね、ミスして怒られても前向きに頑張っててさ。
私はまだ一度もミスしたことないんだけど、きっと○○さんみたいに怒られたらへこんじゃうな~。
上記のセリフは一見相手のポジティブさを褒めているようでもありますが、「自分は一度もミスをしたことがない」とさりげなくアピールもしています。真に相手を褒めたいのなら、「私はミスしたことない」なんて言う必要はありません。
ここで重要なのが、この同僚が何を意図して発言しているかです。例えば同僚が○○さんのことを嫌いで、○○さんを不快にしてやろうとして嫌味を言ったとすれば、これはマウンティングにはあたりません。
しかし、“○○さんに私の方が上だと自覚させたい”とか“○○さんに私を尊敬させたい”という心理がこの同僚に働いていたら、これはマウンティング行為です。要するに、何かを引き合いにして自身の方が相手より優れていると示そうとする行為がマウンティングなのです。
上記の例以外にも、「私も新人の頃はそうだったな~」と勤続年数を引き合いにしたり、「お前にはまだ難しいかもしれないな」と熟練度を引き合いにした優位性の確認がマウンティング行為にあたります。
友達同士のマウンティング例
マウンティングは、立場が同等のはずの友人関係においてもしばしば見られる行為です。
(友人)
へえ、海外旅行したんだ。
私も毎年行ってるけど、やっぱ海外はいいよね~。
上記のセリフは海外旅行の楽しさに共感していると見せかけた、「私のほうがよく海外旅行をしている」アピールです。この“私のほうが”という点がマウンティングの特徴で、「私のほうがモテる」「私のほうが幸せだ」「私のほうが友達が多い」などさまざまなバリエーションが見られます。
また「私のほうが不幸だ」とか「私のほうが苦労している」といった、ネガティブな事柄もマウンティングの対象となることがあります。
ただし上記例のようにさりげなくアピールするだけがマウンティングではありません。自分のほうが上だと明言しようが暗に仄めかそうが、相手に序列を認識させようとする行為はすべてマウンティングだと言えるでしょう。
「マウンティング」の使い方
「マウンティング」は名詞ですが、サ行変格活用(~する等)で動詞として使用できます。「ママ友のマウンティングに辟易する」なら名詞ですし、「ママ友にマウンティングされて辟易する」なら動詞ですね。
「マウンティング発言」「マウンティング行為」「マウンティング女子」など、語尾に特定の語句をつけて使用することもあります。
「マウンティング」と「順位制」
動物の個体群内構造のひとつに「順位制」というものがあります。「順位制」とは「動物個体群内の個体間に何らかの優劣順位が生じ、秩序を構成すること」です。要するに、群れの中に序列があることにより、グループに秩序をもたらす構造が順位制なんですね。
例えば群れのメンバーのランキングが決まっていれば、餌を取り合う必要がなくなります。優先度がはっきりしていれば、無用な争いを避けることができるのです。またニホンザルは順位の確認を行うために、上位の個体が下位の個体にマウンティングすると言われています。
私たち人間も、ある程度の規模のグループでは階級や役職などで序列をつくり、チームの機能性を高めようとします。リーダーシップがあり我の強い性格の人間を、サル山のサルにたとえて「ボス猿タイプ」などと呼んだりしますが、マウンティングもそれと同様、動物としての人間の性なのかもしれませんね。