「朱」とは?意味や使い方をご紹介

「朱」は、古代から使われている、歴史ある色のひとつです。そのものの意味は薄れたとはいえ、現在でも神社の鳥居、印章、漆器などさまざまなものに「朱」が存在します。それでは「朱」の意味や歴史、活用法について詳しく解説していきます。

目次

  1. 「朱」とは
  2. 「朱」のつくり方
  3. 「朱」の歴史
  4. さまざまな場所で出会う「朱」
  5. 「朱」の関連語

「朱」とは

「朱」は、音読みでは「シュ」、訓読みでは「あか・あけ」と読みます。赤色よりも少し黄色がかった色のことを表し(小見出し”「朱色」とは”参照)、古くは混じり気のない色=正色(せいしょく)とされていました。漢字を分解すると、真ん中に「木」があるのが分かるかと思います。松や柏などの切り株をご存じの方は思い出してみてください。中心に赤い部分があります。元々はこれを指して「朱」と呼んだようです。

ちなみに、あか(赤・朱・紅・緋)は、光がさしている様子や、はっきりした様子を表すあか(明)と同語源だと言われています。

「朱色」とは

ひと口に「朱色」といっても多少の幅がありますが、下記リンク先に色見本がありますので掲げておきます。

Color-Sample.com「朱色の色見本」

和色大辞典「朱色」

「朱」のつくり方

天然の朱は、辰砂(しんしゃ)という水銀の鉱石鉱物からつくった顔料でした。辰砂は中国湖南省辰州が産地だったため、こう呼ばれたそうです。また、正しくは赤色硫化第二水銀なので、水銀朱とも言います。

一方、現在では、水銀と硫黄、苛性アルカリで人工的につくられています。加熱反応で一旦硫化水銀となった段階では黒色ですが、赤色硫化第二水銀に変化すると朱色になります。アルカリがカリウムかナトリウムか、あるいは温度をどうするかなどにより、色調が変化していきます。

「朱」の歴史

起源は古代までさかのぼります。原料となる辰砂が非常に貴重で高価だったため、「朱」が使われるのは重要なものに限られました。また、太陽や血液を連想させたり、殺菌効果があるとされたことから、神聖さ、魔除け、生命力、子孫繁栄のイメージとも重なっていったようです。

日本では戦国時代以降、武家の文書に花押(かおう)の代わりに朱色の印章を用いるようになりました。その文書が朱印状と呼ばれます。江戸時代には、徳川幕府が外国への渡航を許可する朱印状を出し、その朱印状を持った者だけが海外と貿易を行いました。いわゆる朱印船貿易です。さらに、朱印地というと、徳川歴代将軍の朱印状によって領有が保証された土地のことを言いました。

現代でも重要な文書や公文書に朱色で印鑑を捺しますが、こうした歴史的な経緯、慣習の名残なのかもしれません。また、印鑑を捺すときに使う朱肉だけでなく、ほかにも漆器の着色、絵の具、朱墨などにも広く活用されてきました。

さまざまな場所で出会う「朱」

古代から使われている「朱」なので、塗料にとどまらず、さまざまなシーンで活用されることになりました。その中には、現代まで受け継がれたものも多くあります。

建築

神社の鳥居や社殿には、朱塗りのものが多く見られます。魔除けや腐食防止などの意味があるとされています。また、平城京、平安京などでは、唐の長安にならい、南中央の門を朱雀(すざく)門、南北を走る道を朱雀大路と呼び、風水で南の方角を司るとされる朱雀(中国の伝説の神獣)を名前にしていました。「朱」が「太陽の光・南の方角」の象徴とされたことからきているようです。

お金の単位

江戸時代の貨幣の単位に朱(しゅ)がありました。価値は一両の16分の1、一分の4分の1だったそうです。

名前

人の名前としては、朱子学で有名な中国の思想家・朱子(しゅし)、明の初代皇帝・朱元璋(しゅ・げんしょう)など、中国の歴史上、度々登場する名前です。日本人の苗字としての「朱」は「あけ」「しゅ」「ちゆ」「とく」などと読みます。植物では朱欒(ざぼん)、動物では朱鷺(とき)の名前に「朱」が含まれています。

「朱」の関連語

「朱」に関連する言い回しや熟語があるので、いくつか紹介します。

 

  • 「朱に交われば赤くなる」=人は環境に左右されやすく、交わる相手によって善人にも悪人にもなるということ。「麻の中の蓬(よもぎ)」と同義。
  • 「朱を注ぐ」=顔が紅潮すること。
  • 「朱を入れる」=(朱字で)添削を入れる。
  • 「朱に染まる」=血まみれの様子。この場合は「朱(あけ)」と読む。
  • 「朱紫(しゅし)」=赤と紫。あるいは正義と邪悪。
  • 「朱夏(しゅか)」「朱明(しゅめい)」=夏のこと。


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