「パイオニア」とは
「パイオニア」とは「開拓者・先駆者」を指す英語由来の外来語です。意味するところはいくつかに分けられます。
1)実際に未開の地を開拓する人
2)研究や事業などにおける開拓者・先駆者・草分け
3)工作兵、先発兵のこと(本隊に先立って道路や塹壕をつくる役目)
4)生物学で言う先駆種・先駆生物
米・TIME誌が毎年特集を組む「世界で最も影響力のある100人」は、5分野にカテゴリー分けがされていて、「パイオニア」もそのひとつです。この場合の基準は、「2)研究や事業などにおける開拓者・先駆者・草分け」でしょう。日常会話の中で「パイオニア」と言うときには、ほぼこの意味だと思われます。
開拓の意味
パイオニア=開拓者とはもちろん、開拓をする人のことです。未「開」の地を切り「拓」いていくことが開拓ですが、その昔、人類が狩猟生活をしていた時代には、基本的に存在しなかった考え方です。つまり、開拓とは農業の歴史と同時発生した概念だといえます。農作物の栽培に適さない荒れ地を整地し、手間をかけて農地に変えていくというイメージです。
さて、これを比喩的に捉えるとするとどうでしょう。学問で言えば、それまで手付かずだった分野に取り組む。産業で言えば、誰も注目してこなかった分野の製品を開発する。スポーツでは、単身で海外に飛び出し活躍をする。彼ら「パイオニア」には必ずフォロワーが存在するという点も、重要な要素です。
「パイオニア」の用例
以上を踏まえて、「パイオニア」を使った例を挙げてみます。
- アインシュタインは、物理学のパイオニアと呼ばれるのにふさわしい存在である
- 仮想通貨のビットコインは、この分野のパイオニアだ
- 野茂英雄さんのパイオニア精神には、頭が下がる思いがします
「パイオニア」のイメージと活用例
不毛の地を自分の力で開墾する、地道な努力を重ねて目標を達成するというイメージから、ほぼ間違いなくプラスの印象を与えます。そのイメージを活用したケースを3例紹介します。
オーディオメーカー「パイオニア」
パイオニア株式会社は1938年創業の、日本のオーディオメーカーです。現在ではカーナビやカーオーディオ、AVアンプのブランドとして有名ですが、かつては日本の「オーディオ御三家」(サンスイ、トリオ、パイオニア)とも呼ばれました。レーザーディスク(カラオケ)などでも一時代を築きました。
宇宙探査機「パイオニア」
アメリカ航空宇宙局(NASA)が行っている惑星探査計画が「パイオニア」計画です。1972年に打ち上げられたパイオニア10号は木星探査、翌年に打ち上げられたパイオニア11号は木星経由で土星探査を行い、その後はともに太陽系を離れて恒星空間に向かいました。地球外生命体との遭遇を想定し、メッセージを記した金属板が搭載されていることでも有名です。
競走馬「パイオニアバイオ」
中央競馬会(JRA)所属の競走馬・パイオニアバイオ(調教師・牧光二)は、2012年香港GⅠの優勝馬・ルーラーシップ産駒の良血馬です。「開拓者・先駆者」を名前に持つ同馬の能力は高く評価されており、中距離を中心に国内グレードレースでの活躍が期待されています。
英語の「pioneer」
英語の「pioneer」についても触れておきます。古フランス語の先発歩兵(先に道などをつくる兵)を意味する「peon」が語源です。後に変化して英語の「pioneer」となりました。ちなみに古フランス語とは、9世紀ごろから14世紀半ばごろまで、現在のフランス北部で使われていた言語で、現代のフランス語とは異なる特徴を持っていました。1066年のノルマンディー公ウィリアムによるイングランド征服に伴い、フランス語は英語の語彙に多大な影響を及ぼしたといいます。
「〇〇のパイオニア」と呼ばれる人々
世の中の様々な分野に「パイオニア」と呼ばれる人たちがいます。ニュース記事の中から、少し紹介します。
- 「ICT教育のパイオニア」=聖徳学園
- 「現代銅版画のパイオニア」=駒井哲郎さん
- 「女性サックス奏者のパイオニア」=小林香織さん
- 「ストロング清酒のパイオニア」=月桂冠
- 「無洗米のパイオニア」=東洋ライス
- 「安全保障のパイオニア」=佐々淳行さん
社会は多くの「パイオニア」によって支えられていると言っても、過言ではないでしょう。