「見据える」の意味
「見据える」(みすえる)は、大きく分けて下記の二つの意味を持ちます。
- 他に目をそらすことをせずに、対象をじっと見続ける。
- ものごとの本質や真相をとらえようと見定める。
言い換えると、「見据える」は実際に目で対象を見る行為と、対象とするものごとのありかたをよく考えたり判断したりするという知的な行為の二つに分かれています。
「見」
「見」は馴染み深い漢字ながら多義的です。「見据える」における「見」は、「見る、目で見る、見える」という意味で用いられています。
「ものごとを見定める」という意味で「見据える」が使われる場合の「見」には、「ものの見方、考え」というニュアンスも含まれると考えられるでしょう。
「据」
「据」には、「見据える」においては、「すえる、位置につける、すえおく」という意味で用いられています。
「据」という字の中の「居」には「その場所に居続ける、そのままでいる」という意味もあります。そこから「据」の「すえる」の意味も派生しているという説もあり、「見据える」の「じっと見続ける」という意味にもつながっていると言えましょう。
この「据」によって、「見据える」には、目で見る場合にも、頭で考える場合にも、じっくりと精査しているニュアンスが含まれていることが分かります。
「見据える」の使い方
目で実際に「見る」という意味での「見据える」は、少々状況を選ぶ言葉だといえます。他に視線を移さず、じっと対象を見つめるのであれば、恋人同士にぴったりの甘い意味のようですが、実のところシビアな用例が多いため、要注意です。
目で見る行為にも、「据」という字義を思えば、そこには見定めるようなニュアンスが入ってきます。愛情によって見つめるのではなく、相手を「見定め」るような視線には、本質を探ろうという感情がこもります。相手に失礼にならないように慎重に使いましょう。
知的行為の「見据える」の場合は、洞察力、想像力、予想や分析などの知的な行為です。ビジネスシーンなどでは、企画書やそのプレゼンテーションなどに使うと、効果的かもしれません。
「見据える」の定型的言い回し
- 【先を見据える】…将来にどのようなことが起こるか、どのような可能性があるか、などを現状から推測する、という意味の言い回しです。現状を分析して先を考えるという、ある意味ビジネスの基本のような言葉です。「先を見据えて」という言い回しも頻繁に使われます。
- 【将来を見据える】…将来のことをじっくりと考え、思い描く、という意味の言い回しです。「先を見据える」と意味が重なるともいえますが、どちらかといえば「将来を見据える」は、個人的な人生設計などによく使われます。
「見据える」の例文
- 警備員は、管理室に入りこんでいた見知らぬ男を見据え、何をしている、と叫んだ。
- ここからは、さまざまな可能性を見据えて投資の配分を決めていこう。
- 地球環境が激変しつつある今、先を見据えたエネルギー政策は優先課題のひとつとなろう。
- 家を建てるときは、家族でどう暮らすかという将来を見据えてタイミングを決めねばならない。
「見据える」の類語
「見つめる」
「見つめる」とは、対象から目をそらさずに、じっと見ることを意味する言葉です。「見据える」と同じく、実際に目で見る場合と、対象について深く考えるという知的行為の二通りで使えます。
目で見る「見つめる」には、見定めたりなにかを探るようなニュアンスはほとんどなく、たんなる凝視、あるいは思いを込めて見るという意味がほとんどです。だからこそ、恋人を見つめる、などのような使い方をされることも多くなります。
知的行為の「見つめる」でよく使われるのが、「自分を見つめる」という言い回しです。自分の内面やありかたを内省するという意味で用いられます。
【例文】
- 遠距離恋愛の二人は、別れの時間が近づいてきた駅のホームでただ互いを見つめていた。
- 本当にやりたいことがわからなくなったA子は、部屋にこもって自分自身の進むべき道を見つめていた。