「襷」とは?意味や使い方をご紹介

皆さん、「襷」という漢字、読めますか?「たすき」と読みます。さまざまなイベントごとでご覧になったり、あるいは実際に使ったことがある方もいらっしゃるかと思います。結び方に苦労した方もおられるのでは? この記事では「襷」という言葉の意味と使い方をご紹介します。

目次

  1. 「襷」という字
  2. 「襷」とは?①
  3. 「襷」とは?②
  4. 「襷」を使った言葉
  5. ことわざ「帯に短し襷に長し」
  6. 「襷」の歴史
  7. 「襷」のまとめ

「襷」という字

」と書いて「たすき」と読みます。音読みはありません。これは「襷」という字が日本で作られた漢字(国字/和字)であることの表れです。「木偏」の「欅(けやき)」とたいへんよく似ていますので、読み書きの際はご注意ください。

「襷」とは?①

「襷」には大きく分けて二種類あります。まず一つ目は、「肩から脇へ通して背中(または胸)で斜め十字に交差させて結ぶ紐」のことです。和服の袖や袂(たもと)が邪魔にならないようにするための品です。主に着物で家事をするときや、神社で神事を行う際に用いられますが、武道や弓道、応援団の衣裳でも見かける機会があるのではないでしょうか。

なお、その見た目から「襷」という言葉は、「対角線上に交差した状態のもの」を意味するようにもなりました。言葉にするとわかりにくいですが、記号で表すと「×」の形です。

「襷」とは?②

もうひとつの「襷」は、「片方の肩から斜めに上半身を一周させた細長い布」のことです。こちらの襷は、駅伝走者、選挙の立候補者、コンテストなどの入賞者がつけているのをご覧になったことがあるでしょう。

「襷」を使った言葉

「襷」の意味はおわかりになったと思いますので、「襷」を使った言葉をご紹介します。

 

  • 襷を掛ける:上記の①の使い方のように、実際に襷を体に掛けることです。
  • 襷掛け:「襷を掛ける」と同じ意味のほか、荷物などを斜め十字に結わえることも「襷掛け」といいます。また、数学の因数分解の解法の名でもあります。
  • 仁王襷・撥ね襷(におうだすき・はねだすき):歌舞伎の舞台で使われる襷です。紅白や紫白の太い襷で、超人的な力を持った役が着用します。
  • 襷を繋(つな)ぐ:駅伝で、走者がバトン代わりの襷を次の走者に手渡すことです。物事を「前任者から後継者へ引き継ぐ」意味もあります。

ことわざ「帯に短し襷に長し」

最近ではあまり使われない言葉ですが、ことわざにも「帯に短し襷に長し」というものがあります。帯にするには短かすぎ、襷として使うには長すぎる布紐から生じた表現で、「(物の性能や人の能力が)中途半端で役に立たない」ことの例えです。

例えばこんな用法があります。ある家庭の娘が年頃になって結婚相手を探していたとします。候補者は何人もいるのにそれぞれに異なる長所短所があってなかなか決まらない。そういう場合に「どの人も帯に短し襷に長しだなあ」と言ったりするわけです。

同様の使い方をした小説から引用しましょう。
 

バスの中から声をかけてくれたあのお梅さんだって、そのうしろから顔を見せたお民さんだって何回かの話はあったのだ。ただそれが例の「帯に短かし襷に長し」でまだ決まらないでいるだけなのだ。二人とも、ひょっとすると明日にでもどこかへきまるかも分らないし、いや、すでに内々はきまっているのかも知れないのである。

犬田卯「錦紗」

「襷」の歴史

古代、「襷」は神事の際に穢れを祓うための装飾品だったといいます。素材は主に植物ですが、なかには勾玉や宝石で作ったものもあったそうです。これを玉襷(たまだすき)*といいます。

その後、時期は定かでありませんが、庶民が袖のある着物を着るようになってから、「襷」は生活必需品となりました。江戸時代には大衆生活に根づき、かつては神聖なものという位置づけだったのが、すっかり日用品へと変化しました。

それに伴って、襷掛け姿で神社へ参拝したり来客応対するのは、はしたない行為として避けられるようになりました。洋服が主流となった現代では、和装の折や、祭りや行事、宣伝など、ほぼ特定の場面でのみ使われているのです。
 

*古代の「玉襷」の意味は上記のとおりですが、後世には「玉襷」といえば「襷」の美称(美しいものや高貴なものを褒めた呼び方)を意味します。

「襷」のまとめ

以上、今回は「襷」について解説しました。古代には神事の際の装飾品、続いて庶民生活の必需品となり、いまでは「晴れの舞台」で見かけることが多い「襷」。こんなに長い歴史を持っていたのですね。


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