「のせる」の意味
「乗せる」と「載せる」は、使い方に迷うことがあるのではないでしょうか。二つの使い分けを知るうえで、まず、「のせる」の意味から見ていきます。「のせる」は、一言で言うと、物の上に別の物や人を置いて、その場所を占めることです。
しかし、「のせる」は、そういう物理的な状態を表すだけでなく、以下のようにたくさんの意味があります。
- 物を運ぶ道具の上に、人や荷物などを積むこと。
- 物の位置を変えるために物を移動すること。特に、下から上に移動すること。
- 紙や電波などの媒体に書いたり、掲載したり、放送・伝送したりすること。
- 相手に働きかけて自分の方に引き込むこと。
- 仲間に加えること。
- 音楽などで調子を合わせること。
4の意味は、さらに①罠にかけること、②おだてるなどして気分よくさせる、調子よくさせることといった意味に分類できます。
「乗せる」と「載せる」の違いとは
次に、「乗」と「載」の漢字の意味を明らかにして、「乗せる」と「載せる」がどのように使い分けられているかを見ていきましょう。
「乗」と「載」の字義
「乗」は、音読み「ジョウ」、訓読み「の-る。の-せる」と読みます。①のる、のせる(乗車、搭乗)、②機会につけこむ(便乗)、③かけ算(乗法、累乗など)、④(仏教用語)人を彼岸に導くこと(大乗、小乗)といった意味があります。
「載」は、音読み「サイ」、訓読み「の-せる。の-る」と読みます。①のせる(積載、搭載、連載など)、②とし。数を表す言葉について年数を表す(千載一遇:せんざいいちぐう)といった意味があります。
「乗せる」と「載せる」の区別
上記のそれぞれの意味から分かるように、「乗せる」は、人を「のせる」場合に使われる漢字表記です。一方の「載せる」は、物を「のせる」場合に使います。
したがって、「のせる」の意味のうち、「乗せる」は、1、4、5、6で、「載せる」は、1、2、3の意味で使うことがわかります。
意味4は、口車にのせる、5は、計画に一口のせる、6は、ピアノの演奏にのせて歌うなどの使い方をしますので、「乗せる」であることがわかりますね。
「乗せる」と「載せる」の使い方
「乗せる」
- 今年のお盆は、息子の自動車に乗せてもらって帰省した。
- いいバイトがあるという友達の口車にうっかり乗せられて、振り込め詐欺の片棒を担いでしまった。
- うちの課長は、おだてて調子に乗せると決裁が甘くなるんだよね。
- 証券会社から、新規公開株購入の勧誘を受けたので、一口乗せてもらった。
- 息子が弾くギターの演奏に乗せて懐メロを歌うのが、私たち夫婦の楽しみです。
「載せる」
- 隣町に引っ越すことになったので、荷物をワンボックスカーに載せてピストン輸送した。
- 網棚に荷物を載せるのが大変そうな人がいたので、手伝ってあげた。
- 新聞社から、私の文章を投書欄に載せることになったが、少しだけ表現を変更したいという連絡があった。
- 大好きな曲が喫茶店のラジオの電波に載って流れてきた。
- ホームページに広告を載せて収入を得る方法が流行っているそうだ。
もう一つ「のせる」
実は、「のせる」には「搭せる」という漢字表記もあります。「搭」の音読みは「トウ」、訓読みは「の-る。の-せる」で、のる、のせる、積み込むという意味です。
「搭せる」は、あまり使われませんが、人や物にかかわらず乗り物に「のせる」場合に使われています。特に人の場合は、飛行機にのせる(搭乗)ことを言います。飛行機のチケットのことを切符ではなく、搭乗券というところからもうなずけますね。
物を「のせる」場合は、「搭せる」よりも「搭載(とうさい)する」という言葉のほうがなじみがあるかもしれません。
【例文】
- たくさんの兵隊と物資を搭せて軍用輸送機が戦地に飛び立っていった。
- 自衛隊が新しく導入した戦闘機は、最新式のレーダーシステムを搭載している。