「美しい」とは?
「美しい」(うつくしい)には、大きくわけて2つの意味があります。
- 視覚的(形、色など)、聴覚的に調和がとれていたりきれいなこと、あるいは、そのように快く感じられたり、心をうたれるようなさま。きちんとして感じがよいさま。
- 精神的な価値として、人の心や態度が理想的で好ましいさま、あるいは、人の心に深い感動を呼び起こす清らかさ、このましさ、などのさま。
古語としての「美しい」
「美しい」は、いにしえより存在する日本語ですが、古語の場合、現代日本語の意味とは少し異なります。枕草子をはじめ代表的な古典文学にも頻繁に登場しますので、簡単に定義のみご紹介します。
- 肉親、わけても妻子などをしみじみ愛しく感じるありさま。あるいは、(小さなものや幼いものを対象として)小さく愛らしい、かわいらしいさま。
- 細部まできれいに整っているさま、申し分がないさま。
- 立派である。見事だ。
- 心や行動、行為がさっぱりとしているありさま。きれいさっぱりしているさま。
- (副詞的に)穏やかに、静かに。
「美しい」の使い方
視覚的な「美しい」の例は、美しい景色、美しい人、美しい絵、美しい街並み、などのように枚挙にいとまがありません。そのニュアンスは、色彩や造作のきれいさ、きちんとした整いなど、文脈によって微妙に変わってきます。
聴覚としては、主に美しい響き(人間の声や鳥の鳴き声、水のせせらぎなど)に用いられます。音楽などに対しては、メロディやハーモニーの好ましさや綺麗さを「美しい」と表現することがほとんどです。
精神的な価値における「美しい」は、清らかさ、純粋さ、愛に溢れた様子、理想的な性格など、人や生物の精神のありかたを対象とします。さらに、人間の行為やその結果も対象とでき、美しい友情、美しい行為、などと表現されます。
「美しい」の文例
- シャガールの絵の色彩があまりに鮮やかで美しいので、しばしその前から動けなかった。
- 初めてパリコレを観たが、モデルたちの容姿の美しいさまは、さすがに別格だった。
- 自然深くにわけいると、美しい鳥のさえずりや川のせせらぎに深く癒される。
- すぐれた作曲家の生み出す美しいメロディは、まるで天上の音楽のようだった。
- 貧しく病む人々に向けたマザーテレサの献身という美しい行為は、まさに聖母の慈愛だった。
- 動物であっても、時には人間をしのぐ美しい母性や愛情を示すものだ。
「美しい」の類語
「美しい」には下記のように様々な類語があります。(多義的なものは、「美しい」の類語たりえる意味のみを紹介します)
- 綺麗(きれい)
- 麗しい:①精神的に気高く豊かで、心温まるようなさま。②事物の色や形、人の容姿などが目に快く美しく映るさま、③乱れたところがなく、整っているさま。
- 華やか:(花のように)美しく、きらびやかなさま。明るく美しいさま。
- 端麗:姿・形、ひとの容姿などが整って美しいこと。また、そのさま。
- 妖美:人の心を惑わすような、あやしい美しさ、また、そのさま。
このうち「綺麗」については、幅広い意味がありますのでさらに深めてご紹介します。
「綺麗」
「綺麗」の基本的な意味は以下の通りです。
- 色、形などが美しく華やかなさま。
- 姿、顔かたちなどが整って美しいさま。
- 声、音などが美しく好もしいさま。
- 汚れがなく清潔なさま。
- 肉体的関係がないさま。純潔。
- 整然として乱れていないさま。
- 残すところなく物事が行われるさま、すっかり。
「美しい」にない「綺麗」の意味は、上記のなかで、まずは4の清潔なさま。清潔な部屋のことを美しい部屋ともいいますが、その場合の美しさは、装飾など全体のありようが中心となります。
5の「純潔」、6の「すっかり」も、「美しい」にはない意味です。「山盛りのカレーをきれいに平らげた」という文章に「美しい」は適切ではありませんね。
「きれい」の文例
- 誕生日に、綺麗な色どりのスカーフをプレゼントしてもらって、とても嬉しかった
- 映画のスクリーンに大写しになった人気女優は、さすがに綺麗でうっとりと眺めてしまった。
- 綺麗な歌声は、心も癒してくれる。