「インモラル(immoral)」とは?
「インモラル」とは、英単語「immoral」に由来する言葉であり、「背徳的なさま」「みだらなさま」を意味します。
由来である英語から考えると、「道徳」「倫理」「習俗」などを意味する「moral」(モラル)を接頭辞「im-」(no/non/notの意味)で打ち消しているのが「immoral」です。
すなわち、「インモラル」は「道徳的でないこと」「倫理に欠けること」「モラルがないこと」と言い換えても良いわけです。「反モラル」と覚えても良いでしょう。
「インモラル(immoral)」の使い方
主に「性の乱れ」に対して使う
「インモラル」は、基本的には「性道徳の乱れ」「秩序を欠いた男女の性の表出」など、人間の性道徳の乱れ・性生活の乱雑さ・背徳的な様子を指して使われます。
「インモラル」が単に「反モラル」の意であれば、例えば「壁に落書きすること」や「老人を虐げること」なども反倫理的であるとして「インモラル」と呼べそうですが、このような使い方はほとんどされません。
「壁に落書きをするな」などの「社会道徳」とは違い、自己の性をどう自認・表明・実践すべきかは個人の高度な自由に委ねられています。だからこそ、その「自由の濫用」は他の社会道徳よりも厳しく「モラルに反する」こととして捉えられるのかもしれません。
必ずしもネガティブなニュアンスではない
「インモラル」は、社会的・一般的な視点からすると「品性がないさま」「道徳に背を向けているさま」として、公的な世界からは排撃される傾向があります。
一方で、文学など表現の世界では「人間性」のひとつの表現型として、(程度の差はありますが)「インモラル」な描写が用いられることもあります。例えば、不倫、浮気、同性愛、その他不貞行為などです。
社会的な是非はどうあれ、人間研究の観点では「性的な道徳を(わざと)破るさま」≒「インモラル」は、「人間らしさの一端」として中立的に分析・表現されることもあることを覚えておきましょう。
例文
- 駅で掲示されている痴漢防止のポスターが、肌の露出が多くインモラルであるという苦情を受けて撤去された。
- この度〇〇賞を受賞した小説は、男女のインモラルな関係を生々しく描き出したことで注目された。
- 何人もの女性と交際してきた彼に言わせれば、人間は皆もともとインモラルで、純粋な恋心などというものはどこにも存在しないという。
- 仕事を失った彼は、毎日歓楽街に出かけては、自堕落でインモラルな日々を送っていた。
「モラル」と「インモラル」の境界線
語形から見ると、「インモラル」は「モラル」を否定していますから、「モラル」が先にあって、それにあてはまらないものが「インモラル」として規定された、と、いっけん考えられそうです。
しかし「インモラル」は何のために規定されたのでしょうか。社会から排撃したり、インモラルな人を病気として治療するためだ、と言うにしては、世からインモラルな表現物はなくなりませんし、人はむしろインモラルな物事を積極的に語りたがる傾向があります。
「インモラルなものはだめだ、けしからん」と言う時にさえ、人の声には熱情がこもり、それがどれだけインモラルであったかを探求し、詳(つまび)らかにしようとするのです。いったいなぜでしょうか。
「知の意思」
フランス出身の哲学者ミシェル・フーコーは、人間には、己の「知の意思」を通して「性のカタログ化」を目指す志向性のようなものがある、と考えました。
つまり、あれはこれ、これはあれと物事を分類・整理することに対して人間は内なる権力を持つのであり、「これはモラル的」「これはインモラル的」と境界線を引く行為そのものに喜びを覚える性質がある、というわけです。
そう考えていくと、「インモラル」は単純に「モラル」の否定ではありません。両者は、人間の内なる権力が、自分(たち)を満足させるために描き出す区分として常に同時的に定義される、と言うこともできるのではないでしょうか。