「オデッセイ」の意味
「オデッセイ」(Odyssey)とは、古代ギリシャの長編叙事詩『オデュッセイア』(Odysseia)を英語的に表記・発音した言葉です。
叙事詩とは、ある歴史的事件を、主に「英雄」と呼ばれる人物を中心として叙述する詩(小説も含むことがある)のことです。『オデュッセイア』も、英雄「オデュッセウス」を中心とする物語です。
ただ、現代においては、「オデッセイ」は作品名というよりも、その物語内容に由来する「壮大な冒険旅行」や「英雄の流浪の旅」を象徴づける意味としてイメージされることが多いかもしれません。(文学・歴史研究を除く)
『オデュッセイア』の概要
『オデュッセイア』は、叙事詩『イーリアス』(Iliad)の続編であり、トロイア戦争後、英雄オデュッセウスの10年にも及ぶ流浪の旅と、故国イタケーへの帰還を描く物語です。作者は、詩人ホメロスとされています。
怪物や魔女との戦い、人情譚、冒険譚、王国譚、軍記物語、冥界旅行、恋物語など内容は非常にボリュームに富みます。キュクロプス、セイレーンなど、よく知られたギリシャ神話の怪物も多く登場します。
『オデュッセイア』は紀元前8世紀頃に成立した詩でありながら、現代でも通用するどころか、現代で書かれるさまざまな物語の「原型」とも呼ぶべき古典の傑作です。
「オデッセイ」の使い方
現代で「オデッセイ」と言った場合、作品名である『オデュッセイア』を直接表すことはあまり多くありません。(作品名としては、ギリシャ読みに基づいて「オデュッセイア」と表すことが多いため)
一般的には、『オデュッセイア』的な英雄譚、苦難に満ちた(しかし最後は報われる)旅、心湧きたつ冒険などを表す言葉(ネーミングワード)として「オデッセイ」を見聞きすることが多いでしょう。
特に、日本において「オデッセイ」と言えば、ホンダ(本田技研工業)が販売するミニバン「ホンダ・オデッセイ」のイメージが強いかもしれません。(詳しくは後述します)
例文(車種としての「オデッセイ」)
- 友人は古い車を乗り換えて、今はオデッセイに乗っている。
- 黒いオデッセイが国道を疾走している。
「オデッセイ」と名のつくブランド・タイトル
「ホンダ・オデッセイ」
「オデッセイ」は、ホンダが製造・販売する5ドアタイプのミニバンの名前です。1994年の第1モデル以降、大ヒットを続ける車種であり、2020年現在では第5世代のモデルが流通しています。
ミニバンと乗用車のメリットを合わせたような特徴を持ち、広い室内、美しいフォルム、小回りが利く運転のしやすさ、低燃費などが人気の理由となっているようです。
命名は、原典である『オデュッセイア』の「長い冒険旅行」にあやかったものであり、販売戦略においても、「旅」がキーワードのひとつとして採用されています。
映画『オデッセイ』(原題:The Martian)
「オデッセイ」は、2015年のSF映画のタイトルとしても知られています。近未来の世界で、事故により火星にひとりだけ残されてしまった男が必死に生き抜くストーリーであり、その内容はいくつもの賞を受賞するなど高く評価されました。
原題(英語名)は『The Martian』(火星人)なのですが、邦題にて「オデッセイ」という単語が採用されました。
その理由は定かではありませんが、「火星人」や「マーシアン」では内容が少々伝わりにくいこと、何百日も火星上で繰り広げられる「生存のための冒険」が、「オデッセイ」の物語を連想させると考慮されたのかもしれません。
ゲーム『スーパーマリオ オデッセイ』
任天堂による2017年のゲームに、『スーパーマリオ オデッセイ』があります。クッパにさらわれたピーチ姫を救うため、マリオが帽子を模した飛行船「オデッセイ号」に乗って世界を旅するというストーリーです。
国(ステージ)ごとに好みの衣装を選択できたり、写真を撮ったりできるなど、「マリオ、世界の旅へ」のキャッチコピーの通り、「旅」にコンセプトが置かれています。