「ヌクモリティ」とは?
「ヌクモリティ」とは、「ぬくもり(温もり)」と「クオリティ」(英語:quality)が合成されたインターネットスラングであり、「心理的な温かみ」「優しいやりとり」「機械的ではない、心がこもった対応」などを意味します。
「クオリティ」とは
「クオリティ」とは「品質、特質」などの意味であり、基本的には「(クオリティが)ある/高い」というポジティブな文脈で用いられます。
ネット上では、この「クオリティ」を、特定個人・組織・企業などの「平常的な態度・対応(の品質)」に喩え、時には皮肉も込めながら呼ぶ文化があります。例えば、いつも不祥事ばかり起こしている企業Aを、「これがAクオリティだ」と呼ぶ具合です。
このスラング的な「クオリティ」が、ネット上の掲示板(2ちゃんねる)などのぬくもり溢れるコメントや、それによって醸成される温かなコミュニティの雰囲気に当てはめられて、「ヌクモリティ」と呼ばれるようになったと考えられます。
「ヌクモリティ」の使い方
「ヌクモリティ」というスラングは、心あたたまる誰かのコメントや態度・対応、およびそれらによって作り上げられる「優しい空気感、雰囲気」を指して使います。
あなたが「心理的ぬくもり」を感じられる事柄であれば、何であれ「ヌクモリティ」という言葉をあてはめて構いません。ただし、あくまでもスラングですので、使用可能な機会は「ネット上のみ」であることを前提と考えましょう。
ネット以外でも「人のぬくもり」を感じる機会は当然あるでしょう。しかし、「ヌクモリティ」には、「ネット上だからこそ感じられる/表現できるぬくもり」という側面があるのです。
ネット文化に特有の「ヌクモリティ」
かつて「2ちゃんねる」などの一部インターネット掲示板では、現実から区別されたアングラ的な文化が形成されていました。相手の顔が見えないことも相まって、心無い暴言や卑語が飛び交うこともしばしばだったのです。
しかしそんな中でも、見ず知らずの人間に無償の善意を注ぐユーザーがいなかったわけではありません。すさんだ荒野にひとたび誰かの善意が輝きを灯すと、呼応するかのようにぬくもりに満ちたコメントが溢れ、感動に包まれるケースもありました。
現実世界とは根本的に異なる、「見ず知らずの他人同士」の「期待していなかった善意」が作り出すぬくもりが、「ヌクモリティ」という言葉の根源と推察されます。よって、この言葉をネット上で発信することそれ自体も「ヌクモリティ」と呼べるでしょう。
例文
- 災害のせいで自分のお店がだめになって落ち込んでいたところ、たくさんの人から励ましや支援のお声がけをいただけた。人のヌクモリティに包まれたよ。
- このゲーム、暴言を吐く人がとても多い。だけど、たまに相手の健闘を称えるヌクモリティあふれるメッセージが交わされることもあって、好き。
- 世の中にはモラルのない人も多いけれど、ヌクモリティを感じられることも珍しくない。
- 手書きの文書は、ワープロで打ちこんだ文字よりもヌクモリティがあっていいね。
- 久しぶりに実家に帰って母親の料理を食べていると、そのヌクモリティに涙が出る。
「〇〇クオリティ」というスラング
VIPクオリティ
「VIP(ヴィップ)クオリティ」とは、2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)の掲示板「ニュース速報VIP板」のユーザーを指して、「あいつらはいつもこうなんだ」「これがVIPの品質さ」という意味で使われるスラングです。
基本的にはあまり良くない意味であり、「VIPユーザーはいつも他を批判してばかりだ」「くだらないことを語っている」というニュアンスです。しかし、稀に良い意味で使われることもあり、文脈による判断が必要です。
派生的に、「VIPヌクモリティ」というスラングが用いられることもあります。
東急クオリティ
2004年頃、テレビCMなどで、東急グループが自社のサービス・商品のコピーとして「それが、東急クオリティ。」という文言を掲げていました。
ネットスラングとしての「〇〇クオリティ」、並びに「ヌクモリティ」も、このコピーが由来であると考えられています。