「凄む」とは?
「凄む」(すごむ)の「凄」の字には、なんとなくおどろおどろしいイメージがあるのではないでしょうか。新聞の三面記事では、「凄惨(せいさん)な現場」などと目にします。この場合、「凄」は(せい)と読むため、「凄む」がよけい読みにくくなりそうです。
「凄む」は、相手をおどすような態度をとったり、恐れさせるような言葉で威嚇(いかく)することです。端的に言えば、「脅す(おどす)」ことですが、基本的に態度や表情、言葉による脅しを意味します。
手にピストルを持つ人が自分と対面したら、ぞっとしますね。ですが、その人がニコニコと上機嫌で話かけてくるなら、たとえピストルを持っていても、「凄む」とは言いません。「凄む」は、あくまで人間個人の脅しの表現にのみ用いる言葉だからです。
「凄む」の使い方
「凄む」は、迫力ある攻撃的な言葉です。脅しや恐がらせる言葉、態度などは「凄む」と表現できますが、相手に直接暴力をふるうなどの行為があった場合は「凄む」範囲を超えています。
具体的には、まず、高圧的な態度、にらみつけるなどの攻撃的な表情が挙げられます。しかし、脅す言葉については、必ずしも怒声や乱暴な口調とは限らず、慇懃無礼(いんぎんぶれい)な態度のように丁寧な口調で静かに脅すのも「凄む」行為のひとつです。
「凄む」とか「凄まれる」ことは、ごく一般的な人間関係でもよく起こることです。暴力事件すれすれの脅しから、職場で上司が部下に示す威圧的な態度、家庭内での喧嘩(けんか)などまで、「凄む」レベルや種類はいろいろあります。
「凄む」の文例
- 反抗期の息子から、「ぜったい授業参観に来るなよ!」とドスの聞いた声で凄まれた。
- 鈴木課長は、気の弱い部下ならちょっと凄めばどうにでも動かせると思っている節がある。
- 「期日までにご返済頂けなければ、数名で職場に伺いますので」と、借金の取り立て業者は鋭い眼光と冷酷な笑みで凄んできた。
- 道端でアクセサリーを売っていたら、こわもての男が「俺のなわばりで何をしている」と、ポケットに手を入れた姿で凄んできた。
「凄み」について
「凄み」という名詞は、「凄む」に連動して「相手を脅すような態度や言葉」という意味を持ちますが、もうひとつの意味があります。
それは、「凄い様子、ぞくっとするような迫力」という意味です。これは、「凄い(すごい)」という形容詞の「程度が並外れている」という意味に連動したものです。
「凄みのある演技」などと使う場合は、「役に入り込んだ」とか「ぞくっとするような迫力ある演技」などといった称賛のニュアンスとなることに留意しましょう。
【文例】あの女優の演技は年々凄みを増してきて、観ているうちに引き込まれてしまう。
「凄む」の類語
「威嚇する」の意味と使い方
「威嚇する」は、(いかく-する)と読みます。脅すこと、威力によって脅すことを意味する言葉です。実際の暴力や攻撃を伴うことなく、相手に態度や言葉やほかの行動などで脅します。
国家レベルの「核による威嚇」などから、猫などの動物が歯をむき出して独特のうなり声で「威嚇」するなど、幅の広い使われ方をします。
【文例】
- 国と国が武器で互いを威嚇するようなありかたから脱却せねばならない。
- 子育て中の野生動物にうっかり近づくと、子どもを守るために威嚇してくることがある。
「威圧する」
「威圧する」は、(いあつ-する)と読みます。権力や相手がひるむような威力を盾にして、相手を脅し、おそれさせることです。「威圧する」も、実際の暴力や攻撃を伴うことなく、相手に恐怖を感じさせたり、屈服させたりします。
【例文】
- 某国は、圧倒的な軍事力で周辺諸国を威圧している。
- あの城はその美しさとともに権力の象徴としての圧倒的な威圧感を感じさせる。