「なんでもござれ」とは
「なんでもござれ」とは、現代の言葉に例えると「何でも来い」と同じ意味になります。「来るものは拒(こば)まない。どんなもの(こと)でも、何が来ようと受け入れる用意がある」という気持ちや態度を表現する言葉です。
「なんでもござれ」は「何でも御座れ」と記述され、「何でも」と「御座れ(御座る)」とに分解することができます。「何でも」は日常的に使われていますが、「御座れ(御座る)」という言葉は、現代ではほとんど使われなくなった言葉です。
ただ、現代でもイベントのキャッチフレーズや時代劇(江戸時代の武士の台詞)などで使われており、映画のタイトル『殿、利息でござる!(松竹:中村義洋監督)』というのもありました。以下で、「何でも」と「御座れ」それぞれの言葉の意味を見てみましょう。
「何でも」
「何でも」は、代名詞「なに(なん)」と副助詞「でも」から構成され、一語の副詞としての意味と連語としての意味があります。「なんでもござれ」の場合は、連語としての意味で使われています。
【副詞としての意味】
- よくわからないが。どうやら:「何でも近いうちに、社長からの通達があるらしい」
- どうしても。ぜひ:「仕事は、何が何でも最後までやり遂げることが重要だ」
【連語としての意味】
- どういうものでも:「あのスーパーには食料品なら何でも揃っている」
- どういうことでも:「弁護士に聞かれたことは、何でもつつみ隠さず話した」
「御座れ」
「御座(ござ)れ」は、「ある・いる・行く・来る」などを意味する動詞「御座(ござ)る」の命令形で、尊敬または丁寧な使い方で表現した言葉です。
「御座る」は、室町時代中期以降の言葉で、動詞「ござある(御座有る)」が転じたものです。用法の広い待遇(たいぐう)語で、尊敬語にも丁寧語にも使用されます。
現代ではほとんど使用されませんが、ただ、「ある」の丁寧な表現は現在でも「ございます(御座います)」の形で普通に使用されています。「ございます」は、聞き手に向かって丁寧な表現をする場合に使用します。
【例文】
- 紳士服売り場は3階、子供服は5階でございます。
- 来月の講習会は、○○日に開催することになりました。ご参加いただけたら幸いでございます。
「なんでもござれ」の使い方
- この調味料はどんな料理にでも使えるので、サラダから丼物までなんでもござれですよ。
- 今更(いまさら)じたばたしても仕方がない。トラブルでもアクシデントでも、なんでもござれだ。
- 最近の映画で使われるSFXやVFXなどは、宇宙から魔法や怪物などあらゆるものを映像化できるなんでもござれの映像技術と言えるでしょう。
- 彼は生まれつき運動神経が良く頭も良かったので、高校生の時には4つの部活を掛け持ちするなんでもござれのオールラウンドプレーヤーだった。
- パソコンやスマホで何時でも何処(どこ)でも簡単に、どんな情報でも手にすることができるインターネット。これこそなんでもござれの世界だ。
「なんでもござれ」的な意味のことわざ
「矢でも鉄砲でも持って来い」
「矢(や)でも鉄砲(てっぽう)でも持って来い」は、「どんな手段でもいいからかかって来い。受けて立つ」という意味のことわざで、覚悟を決めた時や、やけになった時に使用する言葉です。「何でも来い」という意味では類語と言えるでしょう。
【例文】
- これが最後の試合だ。今までの全てをかけて、後は矢でも鉄砲でも持って来いの気持ちで挑(いど)もう。
- 迎え撃つ作戦も準備も万端だ。さあ、矢でも鉄砲でも持って来い。
「御座(ござ)」とは
「御座(ござ)」の読み方には他に「ぎょざ・おまし・おわし・みくら」などがあり、以下のような意味があります。
- 座を敬(うやま)っていう語。天皇や貴人の席。
- 貴人がいらしゃること。
【使用例と意味】
- 御座所(おわしどころ/おましどころ/ござしょ):天皇など高貴な人の居室。
- 高御座(たかみくら):(現代では)即位の礼のときに用いられる天皇の席。京都御所内の紫宸殿(ししんでん)に安置されている。
- 御座有る(ござある):存在の主を敬(うやま)っていう。「いる。ある」の尊敬語。いらしゃる。おいでになる。「天皇は錦帳(きんちょう)ちかく御座有(ござあ)りて」