「切ない」とは?
「切ない」(せつない)は、きわめて一般的な言葉ですが、いざ意味を正確に説明せよと言われると、戸惑うかもしれません。ある意味とても繊細で、曖昧な感情を表現する言葉ともいえましょう。
今回は、「切ない」の類語にも焦点を当てていきますので、まずは「切ない」という言葉をしっかりと理解しておきましょう。
「切ない」とは、悲しさや恋しさなどで、胸が締めつけられるような気持ち。心が苦しく、やりきれない、やるせない様子を表す言葉です。形容詞「切なし」に接尾語「ない」で構成されています。
「切ない」の使い方
「切ない」から連想するものと言えば、多くの人が「切ない恋」と答えるのではないでしょうか。切ないラブストーリーは、昔から映画やドラマの定番ですね。
それでは、「切ない」という言葉が当てはまりそうなシチュエーションを挙げてみましょう。「切ない」には、苦しさ、やるせなさといった感情が含まれています。ですから、完全に満ち足りている、幸せいっぱい、といった状況は適しません。
恋愛を例にすると、同棲していて毎日共に過ごす、いわゆるラブラブなカップルには使わないでしょう。遠距離恋愛で、会いたいのにすぐには会えない。大好きな相手には別の大切な人がいる。両想いなのに、すれ違いばかり。これらは、まさに「切ない」にふさわしい状況です。
どのような場面で使うにも、「切ない」の背景には「会えない」「思いが届かない」「大切なものの喪失」などの心苦しさや哀しさがあります。かつ、その対象を大切に思う気持ちも必須です。何かに対して愛おしい気持ちがあってこそ、「切ない」感情が生まれるのでしょう。
文例
- 恋人がロンドンに転勤となり、すぐに会うことができないのがとても切ない。
- 故郷の開発が急速に進み、子どもの頃遊び回っていた林が宅地となった光景を、切ない思いで眺めた。
- 昨年天に召された飼い犬のリードを見るたびに、切ない気持ちになり、涙が流れる。
「切ない」の類語
「悲しい」の意味と使い方
「悲しい」は、「哀しい」とも表記します。心が痛み、泣きたくなるように辛く切ない感情を意味します。
「悲しい」感情には、その悲しみにかなりの幅があります。楽しみにしていたデートが翌週になって悲しいのは、がっかり、に近いくらいのレベル。戦地と化した故国を難民となって離れてゆく悲しみ、大切な人との死別などは、慟哭ともいうべき悲しみです。
「切ない」の類語としては、泣き叫ぶような類のものではなく、たとえばすっかり様変わりしてしまった故郷を目にした悲しさ、のようなしみじみ染みてくるような悲しみです。
【文例】少子化で母校の中学校が廃校となった。久々に訪れ、解体前の校舎の前で悲しい気持ちに浸った。
「淋しい」の意味と使い方
「淋しい」(さみしい)は、「寂しい」とも表記します。常用漢字表では、「寂しい」は(さびしい)と読みますが、どちらを使ってもよいようです。
「淋しい」の意味は、次のとおりです。
- あってほしいものが得られず、心が満たされずに、物足りない気持ち。
- 孤独で心細く、人恋しい、物悲しい。
- 人気がなくてひっそりとしてる、静かすぎて心細い。
「淋しい」には、涙がとまらないようなもの悲しさ、心細さ、というニュアンスがあります。他方、「寂しい」は、喪失感や満たされないときの静かなもの悲しさというイメージです。
【文例】
- 溺愛していたペットのウサギが天に召されて以来、淋しくて泣いてばかりいる。
- 一人暮らしは気ままだが、冬、わけてもクリスマスや正月は寂しさがつのる。
「やるせない」の意味と使い方
「やるせない」とは、思いを晴らせずにせつない気持ち、つらく悲しい思い、を表す言葉です。「悲しい」「淋しい」よりも「切ない」に近いニュアンスで、憂いを抱いているような印象があります。
【文例】別れてしまった恋人とよく行ったレストランの前を通りかかり、なんともやるせない気持ちになった。