「戯れる」とは
「戯れる」には、「たわむ-れる。たはむ-れる(たわぶ-れる)。じゃ-れる。ざ-れる」と多くの読み方があります。一般的な読み方は「たわむ-れる」「じゃ-れる」で、それ以外は古典などに見られる文語の読み方です。それぞれの意味は以下の通りです。
【たわむ-れる・たはむ-れる(たわぶ-れる)】
- おもしろがって遊ぶ:「子供が戯れる」など
- ふざけてなにかをする。おどける。冗談を言う:「戯れで冗談を言う」など
- いちゃつく:「恋人同士で戯れる」など
【じゃ-れる】
(子供や猫などの動物が)まつわりついて遊ぶ。
【ざ-れる(される)】
- たわむれる。ふざける。
- 気がきいている。しゃれている。世慣れている。
- 趣(おもむき)がある。風雅(ふうが)である。
「戯れる」の使い方
「たわむれる」
「たわむれる」と読む場合は、複数のニュアンスがありますので、文脈によって意味を判断する必要があります。単に「遊ぶ」などとするより、やや奥行きのある印象でしょう。
【例文】
- 浜辺で子供たちが波と戯れている(遊んでいる)。
- 休み時間に生徒たちが教室で戯れている(冗談を言いあったり、遊んだりしている)。
- 夕涼みの川べりでカップルが戯れている(いちゃついている)。
【文学・古典での表現】
「東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる」
(東海(函館市とも大間市とも言われる)の小島にある小さな磯の砂地にしゃがんで、私は泣きながら蟹とたわむれている)
「人に戯れ、物に争ひ、一度は恨み、一度は喜ぶ」
(人とふざけあい、物を奪い合い、うらんだり、糠(ぬか)喜びするだけだ)
「じゃれる」
「じゃれる」は、「ざれる」から転じた読み方です。ただ、「じゃれる」は、「たわむれる」と読み方の混同を避けるために、ひらがなで表記することが多いようです。
「たわむれる」と同じ意味(あるいは近いニュアンス)で使うこともありますが、「小さな子供や猫などの小動物がじゃれあったり、大人(人)にじゃれついている姿」などを表現するときに使うと「たわむれる」より微笑ましい雰囲気がでるのではないでしょうか。
【例文】
- 公園で子供たちが戯れあって遊んでいる。
- 子猫が大きく背伸びして、私の足に戯れついている姿がかわいい。
「ざれる」
「戯れる(ざれる)」は、文語表現です。古典に見られる例を紹介します。濁点がなく「されたる」という表記もありますが、昔は「ひらがな」に濁点をつけることはあまりありませんでした。
「原文:旅立ちたる所にて、下衆どものざれゐたる」
(訳:旅行中、泊まった宿で、身分の低い者たちがふざけていること)
「原文:親のおはしける時より使ひつけたる童(わらは)のされたる女ぞ」
(訳:母が生きておられた時から使っている召使の童女で、気のきいた女を)
「原文:さすがに、されたる遣戸口(やりどぐち)に」
(訳:そうは言うものの、風情のある遣戸口(板の引き戸)に)
「戯れる」の類語
「遊ぶ」
「遊ぶ」は、「好きなことをする」という意味のほかに、「からかう」とか「もてあそぶ」ということも表します。「複数の人(特に子供)や小動物が遊んでいる様子」は、「戯れる」に近いでしょう。
【例文】
- 校庭で低学年の児童たちが追いかけっこをして遊んでいた。
- 子猫たちが夢中で遊ぶ様子が収められたポストカードを買った。
「ふざける」
「ふざける」は、「冗談を言う。おどける」「人を馬鹿にしたようにふるまう」などの意味があります。
「ふざける行為」は、どちらかというと周囲から否定的な受け取られ方をしますが、「冗談を言ったり、おどけたりして、みんなで楽しく過ごす様子」は、「戯れる」に近い感じを受けます。
【例文】
- 掃除の時間、教室で友達とふざけていたら、まじめに掃除している生徒から怒られた。
- 往来で恋人らしい男女がふざけあっている様子に、通行人が眉をひそめて通り過ぎて行った。
「はしゃぐ」
「はしゃぐ」は、「陽気に騒ぐ。調子に乗って騒ぐ」という意味です。幼い子供や若い人々が楽しそうにワイワイガヤガヤとしている様子が、「戯れる」の類語と言えそうです。
【例文】
- 海開きのニュースで、子どもたちがはしゃぎ回る映像が流れていた。
- アイドルグループの握手会で、ファンの女の子たちがはしゃいでいた。