「ありがたき幸せ」とは?
「ありがたき幸せ」は、めったにない巡り合わせ、幸運といった意味を示す古風な言い回しのことです。「めったに起こらないような、素晴らしいこと」に対して「幸せ」と感じている気持ちを言葉に表しています。
漢字では、「有難き幸せ」「有り難き幸せ」「有難き仕合せ」などと表記されます。
「ありがたき幸せ」の使い方
「ありがたき幸せ」は、主に感謝の気持ちを伝える言葉として昔の武士が使っていた言葉です。時代劇が好きな方はよく聞く言葉かもしれません。
現代では、会話で使う人がほとんどない言葉ですが、状況によって「目上の人に感謝を表す言葉」「ユーモアのある言葉として」使われる場合もあります。
武士が感謝の意を表す言葉
- 殿自らお越しいただくとは、誠にありがたき幸せに存じまする。
- そなたには、たいそうご尽力を賜り、拙者ありがたき幸せに存ずる。
目上の人に使う
「ありがたき幸せ」は、目上の人に褒められたときや、感謝の気持ちを伝えるときに使われることがあります。しかし、使う相手によっては不快感を与えることもあるので、ある程度打ち解けて普段から冗談を言い合えるような関係の間柄で使うのが妥当でしょう。
【例文】
- 先日はご馳走になり、誠にありがたき幸せに存じます。
- お褒めの言葉をいただき、ありがたき幸せと感謝の気持ちでいっぱいです。
ユーモアのある言葉として使う
めったにないような素晴らしいことに対してユーモアを込めて、時代がかった表現として使われることもあります。
【例文】
- まさか、お弁当を作って下さるなんて、誠にありがたき幸せにござります。
- (友達同士で)宿題を写させてもらえて、なんとありがたき幸せ。
「ありがたき」の由来
「ありがたき幸せ」の「ありがたき」は、文語表現の形容詞「ありがたし(有り難し)」の連体形です。漢字からもわかるように物事が「有る」ことと、その「有る」ことが「難い(かたい)」、つまり「有ることが難しい」ことが「ある」とか「起こる」という意味の表現です。
それが、「めったにない。珍しい」という意味に変化し、やがて、その「めったにないこと」が自分に起こったことに対して、「感謝にたえない。うれしい」という気持ちを表す現在の「ありがとう」に転じたとされています。
古典での使われ方
「ありがたい」の原意である「めったにない」という意味での用例は、平安時代の女流作家などの作品によく見られます。
その一例を挙げれば、清少納言の『枕草子』には、「ありがたきもの。舅(しゅうと)にほめらるる婿。また、姑(しゅうとめ)に思はるる嫁の君(訳:めったにないもの。舅にほめられる婿。また、姑に思われる嫁)」などとあります。