「噤んだ」とは
「噤んだ(つぐんだ)」とは、「口を閉じて話すことを止める」「黙る」というさまを表現する言葉です。この意味から、主に人の「口」に関する言い回しで使用される言葉です。「口を-」を付けて使用されるのが一般的で、以下の様な表現があります。
- 口を噤む
- 口を噤んだ
- 口を噤め
人が「口を噤む」行為には、「自分の意志」「他人からの命令」「無意識」などの原因があります。「命令」では強い口調とともに使用されるニュアンスがあります。「無意識」の場合は、当人が意識せずにしてしまう行為や反応などで、無意識なしぐさとなって現れます。
無意識に「口を噤むしぐさ」
人は知っていることがあっても言えなかったり、言いたいことがあるのに言えずに我慢している場合などに、無意識に「口を噤む」ことがあります。
深層心理の観点から、口を噤んだ際のしぐさには、以下のような心理が現れていると言われています。
【口を噤んだ際のしぐさと心理】
- 自分に自信がなく不安な時は視線が落ち、何か企んでいるなど攻撃的な感情を持っている時は視線は上向きになる。
- 口を噤んで口に手を当てているのは、自分を守るため、言いたい事を我慢していることの現われ。
- 唇をかむしぐさや歯を噛み締めている時は、自分の感情を押し殺そうとしている。
「噤んだ」の例文
- 彼は彼女に何か言いかけたが、彼女の様子に結局は口を噤んだままだった。
- 彼も母親と同じように口を噤んだまま、身じろぎもせず手術室前の長椅子に座っていた。
- 周りの気遣いの声も耳に入らないのか、彼女は口を噤んだまま、うな垂れているばかりだった。
- あの二人は険悪な関係にあるのか、お互いに口を噤んだまま、目を合わせることもなかった。
- 「あんたが口を噤んだまま消えてくれることを、あいつは願っているはずだ。」と彼は言った。
「口を噤んだ」の類語
「口を閉じる/閉ざす」
「口を閉(と)じる/閉(と)ざす」とは、「口をしめて話をしない」というさまを表現する言葉です。「閉-じる/閉-ざす」は「噤(つぐ)む」と違い、様々な物事に対して幅広く使われる言葉で「しまる。しめる。やめる。おわる」というような意味があります。
【例文】
- 彼はその事件に関しては口を閉じたまま、頑として語ろうとはしなかった。
- 私が話しかけると、彼は読んでいた本を閉じて振り返った。
- 30年続いたこの会も、諸般の事情により来月をもって閉じることになりました。
「黙る」
「黙る(だまる)」とは、「物をいうのをやめる。無言になる」というさまを表現する言葉です。「黙って~する」「~の為に黙る」「うるさい、黙れ」などと使われます。
また、「黙り込む」という言い回しがあります。喧嘩をした時、仕事上のことや自分に非があることで注意された時などにとる行動で、心理的には以下の様な状態にあります。
- 頭が真っ白になり、何も話せなくなってしまっている。
- 自分に弁解の余地がないので黙りこんでいる。
- 相手に「何を言っても無駄だ」と見放している。
- 相手の様子を窺っている。
【例文】
- 彼は突然の指名に頭が真っ白になったのか、一言も発せず黙り込んでしまった。(1の例文)
- 損失の原因が自分にあると自覚していたので、課長の叱責に黙り込むことしか出来なかった。(2の例文)
- 彼女のヒステリックな様子に、今は何を言っても無駄と黙って様子を見ることにした。(3、4の例文)
「だんまりを決め込む」
「だんまりを決め込む」とは、「何も言わずに黙ったままでいること」というさまを表現する言葉です。
「だんまり」は、歌舞伎の演出のひとつで、暗闇の中で役者同士が無言で探りあったり、物を奪い合ったりする場面を「暗闘(だんまり)」と表記します。一説には「黙る」の語源と言われています。また「決め込む」とは、「そうすることに決めて押し通す」という意味です。
【例文】
- 都合が悪くなったとたんにだんまりを決め込む彼に、彼女はうんざりしていた。
- うかつに発言すると後で社長に睨まれるので、誰もがだんまりを決め込んだ。
- あいつは自分に分が悪くなると、いつもだんまりを決め込む。