「人事を尽くして天命を待つ」とは
「じんじをつくしててんめいをまつ」と読みます。「人事」とは、ここでは人間の力で出来る事を指し、会社の「人事」等の使い方とは異なります。また、人の知恵という意味の「人智」としてしまうのも間違いです。そして、「天命」とは使命や運命の事で、人間の意志で変える事の出来ない定めや巡り合わせの事を言います。
「人事を尽くして天命を待つ」の意味
「人事を尽くして天命を待つ」とは、人として出来る限りの最善の努力をしたら、その後の結果は運命にまかせるという意味です。
物事の結果は運命に左右されるところがあるので、出来る限りの事を全てやり尽くした後は、静かに祈って待つしかない。だから、不安になったり、ジタバタしても仕方がないと諭しています。また、自分の全力を尽くす事が出来れば、どの様な結果でも後悔する事はないという心情を表す言葉でもあります。
「人事を尽くして天命を待つ」の由来
「人事を尽くして天命を待つ」の由来は、中国の胡寅(こいん)という儒学者が書いた『読史管見(トクシカンケン)』に記載されている文にあります。
“人事を尽くして天命に聴す。”
現在では「人事を尽くして天命を待つ」という形で広まっていますが、原典では「人事を尽くして天命に聴(まか)す。」となっています。「聴す」には、聞き入れるや、聞き従う、成り行きに任せるという意味があります。
これは、「淝水の戦い(ひすいのたたかい:西暦383年11月)」という、中国の東晋(とうしん)の政治家・謝安(しゃあん)が指揮を執り、前秦(ぜんしん)の苻堅(ふけん)の侵略行為に対して、国の存亡をかけて戦った戦いについて書かれた文章の一部で、全体では次のようになります。
“謝安は国の存亡をかけて一大決心をした。やれることは全てやった。あとは天命にまかせる。”
この言葉には、謝安のやれることを全てやりつくしたという自信と満足、そして、どの様な結果になろうとも受け入れるという覚悟と、それを静かに待ち構えている様子が伺えます。
「人事を尽くして天命を待つ」の使い方
「人事を尽くして天命を待つ」の使い方を、例文を通して見てみましょう。
「人事を尽くして天命を待つ」の例文
1.全力の演技を終えて、キス・アンド・クライでほほ笑むフィギュアスケーターは、「人事を尽くして天命を待つ」といった心境なのだろう。
2.大学受験のために、この一年間寝る間も惜しんで勉強してきた。あとは、「人事を尽くして天命を待つ」のみだ。
3.地球に巨大隕石が追突すると分かった日から、やれることは全てやった。後は、審判の時を静かに待とう。我々には「人事を尽くして天命を待つ」ことしかできないのだから。
「人事を尽くして天命を待つ」は、どのような結果になっても容易に受け入れることができる程、出来る限りの努力を尽くしたという時に使うようです。この言葉からは、良い意味での開き直りや、結果の善し悪しと関係なく最善の努力をしたことへの自負が感じられます。
「人事を尽くして天命を待つ」のまとめ
「人事を尽くして天命を待つ」は、物事の結果は自分でコントロールできるものではないので、そこは開き直って運命に任せ、自分は自分のできることを頑張るしかないのだと教えてくれる言葉です。
この言葉を念頭に置いておけば、後々後悔しないように前もって考えられる限りの努力と準備をすることができるのではないでしょうか。そして、「人事を尽くす」ことができれば、結果が出るまでの時間を心穏やかに、不安にさいなまれたり見苦しくジタバタ悪足掻きをするような真似をしないで、リラックスして過ごすことができそうです。