「記す」とは?
「記す」の読み方
「記す」の読み方は、「しる-す」「き-す」の2種類です。現在では「しる-す」で読む方が多いでしょう。サ行変格活用の動詞「記する」(き-する)が、五段活用に変化して「き-す」となりました。
「記す」の意味
「記す」の意味は以下の2つです。「しる-す」と「き-す」のどちらの読み方でも同じ意味を持ちます。
- 文字及び文章を書きつける、記録する
- 忘れないように覚える、記憶する
「記」は形声文字(音読みと文字を組み合わせた漢字)です。言葉を表す「言」、「キ」の読みを表す「己」という字で構成されています。言葉を整理してしるすという意味で、文字として書いて残しておくような意味合いです。
書き留めて残すことから、頭の中に記録させること、つまり「覚える」という2の意味が派生しました。
「記す」の使い方
1.書きつける
「記す」は、何かに文字を書き付けておく、整理して記録する時に使うことができます。「書き残す」というニュアンスを含んでいるでしょう。たとえば、重要な書類に署名する、忘れないようにメモを取るといった場面が挙げられます。
【例文】
- 契約書類に名前を記して、実印を押した。
- 後で思い出せるように、気になったことはメモ帳に記すようにしている。
- 上司から後で役に立つように、それまでの過程を記してまとめておいてほしいと頼まれた。
2.忘れないように覚える
「記す」は、忘れないよう頭の中に留めるという意味でも使えます。単に覚えるというよりも、意識してしっかりと記憶させるようなイメージの言葉です。「胸」や「心」などの言葉を伴って用います。
【例文】
- 皆様から受けた温かいお言葉をを、しっかりと胸に記しておこうと思います。
- 悔しさを心に記して、いつの日か見返してやろうと決意した。
「記す」の類語
書く
「書く」は、文章や文字を記入する、ある程度長さのある文章を作ることの意味です。「記す」とほとんど同義で使うことができます。
あえて違いを挙げるとするならば、「書く」は単に文字や文章を記入することを指しますが、「記す」には上述の通り「記録する」ような意味合いがあります。
また、小説や記事、論文などを執筆することは「書く」と表すことが多いですが、これらに対して「記す」を使う例はあまり見られません。
【例文】
- 『平家物語』の卒業論文を書き終えた。
- 入園グッズに子供の名前を書いた。
- 時間切れとなり、最終問題の答えが書けなかった。
したためる
「したためる」には複数の意味がありますが、その中の「書き記す」という意が「記す」の類語にあたります。やや文語的な表現ですが、「手紙をしたためる」などの形で用いられます。
「したためる」は「認める」と書きますが、漢字で表すことは少ないでしょう。現在では「みとめる」と読むことのほうが多いかもしれませんね。
【例文】
遠方に住む友人にあてて、お祝いのお礼の手紙をしたためた。
「記す」の同訓異義語
「しるす」と読む言葉は、「記す」以外にもいくつか挙げられます。ここではその一部を紹介しておきます。
「印す(標す)」は何らかの痕跡や、マークなどの符号や記号をつけること、つまり「しるしをつける・目印を残す」意味で使われます。
また、「徴す」と書く場合には、何かの兆しを示すという意味があります。ただし、この言葉は現在ではほとんど使われることはないでしょう。
【例文】
- 生地にチャコペンシルで出来上がり線を印しておいた。
- 通りがかった誰かが気づくように、道に目印を標した。
- アンケートで該当するところにチェックマークを印した。