「紡ぐ」とは?
「紡ぐ」は、「つむぐ」と読みます。糸巻きなどの心棒を意味する名詞「錘(つむ)」が動詞化したガ行五段活用の動詞で、意味は以下の2つです。
- 綿や繭(まゆ)を錘にかけて繊維を引き出し、縒(よ)りをかけて糸にすること。
- (比喩的に)言葉をつなげて文章を作る、多くは、物語や詩歌などを作ることをいう。
「紡ぐ」という言葉は、もともと1の意味で使われていました。グリム童話『眠れる森の美女』で重要な役割を果たす「糸車」とは、上の写真のような道具です。この糸車を使って糸を紡ぎます。
綿糸(めんし)ならば綿花(めんか)の実から取った綿を、絹糸(けんし、きぬいと)ならば蚕の繭を茹でたものから繊維を引き出し、より合わせて「糸」を作る作業が「紡ぐ」です。
「素材」から必要なものを引き出し、それをより合わせて製品にする、というところから転じて、2の意味が生まれました。
「紡ぐ」の使い方
糸を「紡ぐ」
「紡ぐ」という言葉を作った例文をいくつか紹介しておきましょう。1つ目は、寺田寅彦の『糸車』からの引用です。この作品の中では、いわゆる「糸を紡ぐ」という作業を詳細に説明していますので、興味のある方は読んでみてください。
物語や詩などを「紡ぐ」
言葉をうまく組み合わせて、詩や物語を作ることを表現するのにも「紡ぐ」という言い回しを使います。ただ「作る」と表現するよりも、趣のある雰囲気が感じられますね。
【例文】
- 彼の朴訥とした語り口調は、独特の世界観を紡ぎだした。
- 硬質な筆致が紡ぎだす物語は、読者をくぎ付けにした。
「紡ぐ」まとめ
現代を生きる我々にとって、糸を「紡ぐ」という作業は日常的に目にするものではありません。
この言葉が比喩として使われていることは、昔の日本人にとって「糸を紡いでいる光景」が日常的なものであったことを示していると言えるでしょう。言葉の使われ方から文化の移ろいに思いを馳せてみるのも、面白いものですね。