「いたたまれない」の意味
「いたたまれない」とは、(何らかのことが原因となり精神的な圧力を受けて)その場にいることができないという意味です。
「いたたまれない」は、「居る」(意味:その場に存在する、いる)と「堪る」(意味:がまんする、こらえる)の二つの動詞がくっついた連語です。
「いた」は「居る」に存続の助動詞「た」がついた語で、(その場に)いつづけるといった意味合いです。「たまれない」は「堪る」に、可能の助動詞「れる」と打ち消しの助動詞「ない」がついて、我慢できないことを表しています。
「いたたまれない」の由来
「いたたまれない」の由来は江戸時代の後期までさかのぼるといわれています。もともとは「いたまらない」という言葉で、我慢ができないという意味だったそうです。
その言葉が変化して、現在の「いたたまれない」という形になりました。よく使われるのは「いたたまれない」ですが、「いたたまらない」という形も存在しています。この二つの言葉の意味は同じです。
「いたたまれない」の使い方
「いたたまれない」は、なんらかの原因で動揺してその場にとどまるのが難しいことを表現する時に使う言葉です。「いたたまれない気持ち」「いたたまれない思い」のような使い方もよく見られます。
また、「いたたまれない」は、主に自分の感情を表すときに用いられますが、他人の気持ちを察して言い表す場合もあります。
「いたたまれない」はどんな気持ちのときに使う?
ここでは、どんな気持ちのときに「いたたまれない」を使うのか、感情やシチュエーションごとに例文を含めて見ていきましょう。
気まずい
噂話に夢中になっていたら当人がやって来た時や、喧嘩別れした人とバッタリ会ってしまった時など、その場にいるのが気まずいと感じた場合、「いたたまれない」を使います。
【例文】
- 中高生のころ、家族で映画を見ていてラブシーンになると、いたたまれない気持ちになったものだ。
- 親友と同じ高校を受験したが、結果は私だけ合格だった。親友は合格確実と言われていただけに、余計にいたたまれなかった。
- 貸した金を返さない友人と居酒屋でばったり出くわしたが、いたたまれなかったと見えて彼はすぐに店を出て行った。
恥ずかしい
人前で失敗をしてしまったり、常識と思われることを知らずに人から指摘されたりして、恥をかくこともあるでしょう。恥ずかしい思いをして、人前から逃げたい気持ちになった場合にも「いたたまれない」が使えます。
また、同僚の非常識な言動などで「この人と一緒にいることが恥ずかしい」ということもあります。「いたたまれない」気持ちになるのは、なにも自分の失敗だけではありません。
【例文】
- 小学校で習った漢字を間違えて、顔から火が出るようないたたまれない気持ちになった。
- 一緒に飲みに行った友達が店員にとても横柄な態度を取っていて、いたたまれなくなった。
悲しい・辛い
心を傷つけられたり、我慢できないことがあったりして、悲しみや辛さでその場に平静な状態でいられないといったときに「いたたまれない」を使います。
自分自身が傷ついた場合だけでなく、事故や事件の被害者が気の毒で自分のことのように辛いということを「いたたまれない」と表現することもあります。
【例文】
- 親友だと思っていた人が私の悪口を言っているの偶然聞いてしまい、いたたまれなくなった。
- 繰り返される子どもの虐待のニュースを聞くと、いたたまれない気持ちがする。
ビジネスの場での「いたたまれない」の使い方
「いたたまれない」はビジネスの場で使うことができるでしょうか。「いたたまれない」は、謝罪や反省の場面で、自分の言動を恥じていることを表現する言葉として用いられることがあります。
【例文】
- 先般の不始末でいたたまれない思いがし、直接お詫びに伺いました。
- 酒席での振る舞いにいたたまれない思いがいたします。誠に申し訳ございませんでした。
「いたたまれない」の類語:居心地が悪い
「居心地」(いごこち)とは、その場所や地位に居るときの気持ちを指す言葉です。ですから、「居心地が悪い」は、その場に居ると良い気持ちがしない、不快であることを表していることがわかりますね。
「居心地が悪い」は、気まずい場面で用いる「いたたまれない」に近い表現ですが、こちらの方が不快な状態が長く続いているニュアンスです。
また、「いたたまれない」は精神的なことについてのみ用いられるのに対し、「居心地が悪い」は「このソファは居心地が悪い」のように物理的なことに対しても使う点で異なります。
【例文】
- 彼女のうちへ遊びに行ったら、むこうの両親に質問攻めにされて、居心地が悪かった。
- 雰囲気が暗くて、人間関係がぎすぎすした居心地の悪い職場に嫌気が差す。