「似つかわしくない」の意味
「似(に)つかわしくない」とは、「似合わない」「ふさわしくない」という意味の言葉です。「似付かわしくない」と「付(つ)」を漢字表記しても構いません。
品詞を分解すると、形容詞「似つかわしい」(意味:似合う、ふさわしい)の連用形「似つかわしく」に否定の「ない」がついた形です。
「似つく」について
「似つかわしい」の動詞形といえる「似つく」の意味も確認しておきましょう。「似つく」の意味は以下の二つです。
- よく似ている。
- 本当らしく(本来あるべき姿に)見える。
さらに語幹をたどり、「似る」という言葉にも「(本物と)釣り合う、相応する」という意味があることを踏まえておくと、「似つく」や「似つかわしい」、およびその否定形の意味も取りやすくなるかもしれません。
「似つかわしくない」の使い方
「似つかわしくない」という言葉を使うにあたっては、まず比較の対象となる「本物、本来あるべき姿や性質(をそなえた事物)」が存在することが前提です。
その前提に対し、主に雰囲気などの面で「適切ではない」「それらしくない」という意味合いで使うのが「似つかわしくない」です。例えば「厳格な式には似つかわしくない服装」などですね。
ただし、「本物、本来あるべき姿や性質」と主体との比較には主観も含むことがあり、その比較対照は必ずしも客観的なものではありません。例えば「いつも冷静沈着な彼には似つかわしくない動揺ぶり」などは主観的な用法です。
例文
- 「質素倹約」。それはいつも湯水のように金を使い、自由奔放に遊びまわっている彼には一番似つかわしくない言葉だ。
- 芸術的で想像力あふれる彼に、単調な事務仕事は似つかわしくないのではないか、と友人は進言した。
- 「あなたは彼の相手に似つかわしくないわ」と恋敵に言われたが、私が彼のために努力するのはこれからだ。
「似つかわしくない」の類語表現
「似つかわしくない」の類語としては、以下のような言葉が挙げられます。
- ふさわしくない
- 不適当だ(適当でない)
- 不適格だ(適格でない)
- 不似合いだ(似合わない)
- そぐわない
- 妥当ではない
- らしくない
ただし、この中で「ふさわしくない」については使い方に少し注意すべき点があるため、もう少し詳しく解説します。
「似つかわしくない」と「ふさわしくない」の違い
「似つかわしくない」と「ふさわしくない」は、両方とも何らかの二つの事物を比べて、「適切でない」「合っていない」と言っている点は共通です。
ただし「ふさわしくない」には「比較先の事物の(能力・性能などの)要求を満たさない」というニュアンスがあり、この点で「雰囲気の不一致」が主な使い方である「似つかわしくない」とは相違があります。
具体的に例文で比較してみましょう。
- その赤い靴は、あなたには似つかわしくないよ。(※その靴はあなたの雰囲気に合わないという指摘)
- その赤い靴は、あなたにはふさわしくないよ。(※その靴がぴったり合う人間があなたの他にいる=その靴のデザインや色はあなたでは履きこなせないという指摘)
上の例のように、二つの言葉は使いようによってはニュアンスが異なり、時にけなし言葉ともなりえてしまいますのでご注意ください。
「似つかわしくない」を英語で言うと?
「似つかわしくない」を英語で言いたい場合には、以下のような表現を用いましょう。
- not suitable(not suit)~
- not proper~
- not becoming(unbecoming)~
いずれも「似合う」「ふさわしい」などの単語を否定している形です。後ろに「for/on/in」などの前置詞を置くことで、「~に似つかわしくない」と比較対象を示す形も覚えておきましょう。
また、上記の単語を使わずとも、簡単に「A is not for B(occasion)」とすることで、「AはBのためのものではない(≒似つかわしくない)」という文を作れることを覚えておくと便利です。
例文
- That red shoes are not suitable for church.(その赤い靴は教会[の雰囲気]には似つかわしくない)
- Her laughter was not becoming on that silent night.(彼女の笑い声はその静かな夜には似つかわしくなかった)
- That dress is not for marriage.(そのドレスは結婚式には似つかわしくない)