「唆る」とは?
「唆る」とは?
「唆る」は「そそる」と読みます。「ある事がきっかけとなって、反射的に感情・行動を起こさせる」という意味の言葉です。
少し複雑な話になりますが、漢字辞典で「唆」という字を調べると、一般的には、音読みとして「サ」、訓読みとして「そそのか(す)」が紹介されているのみです。
「唆」という漢字そのものは常用漢字なのですが、「唆る」と書いて「そそる」と読むのは一般的ではなく、通常は「そそる」とひらがなで表記されます。
「唆」の字義
前述のとおり、「唆」という漢字は、「そそのかす」と読みます。「教唆(きょうさ)」「示唆(しさ)」といった熟語からもわかるように、「そそのかす」「けしかける」という意味を持つ漢字です。
「そそのかす」「けしかける」は、「その気になるように仕向ける」「おだてて悪い方へ誘い入れる」という意味を持ちます。
「そそる」の意味
「唆る」は、通常ひらがなで「そそる」と書くことが多いのは前述の通りです。ひらがなで「そそる」と書いた場合、この言葉は複数の意味を持ちます。
- 刺激を与えて、ある感情や行動を起こさせる。
- 心が浮き立つ。浮かれる。
- 遊里などをひやかして歩く。
- 高くそびえる。
- 揺する、または揺すって選り分ける。
現在は、1の意味が主流です。古語では、2~5の意味での使用例もよく見られます。4の意味で用いられる場合は、「聳る(=そびえる)」という漢字表記をすることもあります。
「そそる」の意味・用法の変遷
本来、「そそる」とは、5の「揺する」という意味で使われる言葉であったようです。時代が下るにつれて、「心が揺さぶられる・浮き立つ」としても使われるようになり、「ある種の感情や行動を誘発する」という意味になりました。
あまり上品な表現ではありませんが、(性的な意味で)魅力的な女性のことを「そそる女」などと言うのは、この流れによるものでしょう。
「唆る」の使い方
「そそる」という言葉を使った例文をいくつか紹介します。漢字ではなく、一般的なひらがな表記にしています。
- 記事の見出しは、読者の興味をそそるものでなくてはいけない。
- キッチンから食欲をそそる香りが漂ってきた。
- 子を失った親猫の悲痛な鳴き声に涙をそそられる。
最後の例文の中で、「そそられる」という言葉があります。「そそる」に受け身の助動詞「られる」がついた形です。「涙をそそられる」と書くと、「涙」あるいはそれを流す「鳴き声を耳にした人」が動作主体となります。
「鳴き声」を主体にするならば、「子を失った親猫の悲痛な鳴き声が涙をそそる」です。どちらも同じ意味ですが、主体がどちらかを意識して文を書かないと主語述語のねじれが起こりうるので注意しましょう。
「唆るぜ、これは!」
「唆る」という漢字表記を一躍有名にしたのは、「唆るぜ、これは!」というセリフです。これは、『週刊少年ジャンプ』2017年14号より連載中(2020年3月現在)の漫画『Dr.STONE』の主人公、石神千空(いしがみせんくう)の口癖です。
謎の発光現象によって地球上の全人類が石化してから数千年、奇跡的に復活を果たした主人公の千空は、その卓越した科学知識を生かして失われた文明を復活させようと奮闘します。
ストーリー中、困難な課題や克服すべき問題に直面した時の千空の口癖が、「唆るぜ、これは!」です。この場合、「そそられている」のは、千空の好奇心、探求心、挑戦心、といったところでしょう。この漫画で「そそる」という言葉を覚えた人も多いのではないでしょうか。