「一悶着」とは
ちょっと休むことを「一息つく(ひといきつく)」、「一服する(いっぷくする)」などと言いますが、このときの「一(ひと/いち)」は、僅か・ちょっとという意味ですね。
「一悶着(ひともんちゃく)」も、ちょっと悶着することを言います。では、この「悶着」とは何でしょうか?
「悶着」とは
意見の食い違いなどから起こる諍い(いさかい)や揉め事を「悶着(もんちゃく/もんぢゃく)」と言います。辞書で「悶着」を引くと、よくないものと関わり合うことという意味も記されていますが、こちらは現在ではほとんど使われていません。
「悶」は、音読みでは「モン」、訓読みでは「もだ(える)」。悩み苦しむ・激しい痛みに苦しむ・思い煩うなどの意味があります。
一方、「着」は、音読みでは「チャク・ジャク」、訓読みでは「き(る)・き(せる)・つ(く)・つ(ける)」。くっつく・くっつける・身につけるなどを表します。
字義から考えると、「悶着」のもともとの意味は、思い煩う事柄がくっついている=よくないものと関わり合うことだったのでしょう。それが転じて、思い煩う事柄を諍いや揉め事と解釈するようになったと考えられます。
「一悶着」の意味
上の説明から、「一悶着」とは、軽い諍い・ちょっとした揉め事を表す言葉であることがわかるでしょう。
「一悶着」の使い方
「一悶着」は、多くの場合、「一悶着ありそうだ[あった]」「一悶着起こす」などの言い回しで用いられます。
【例文】
- 血相を変えて彼が入ってきたから、一悶着ありそうだと覚悟した。
- 彼女とは一悶着あったから、顔をあわせるのは気まずいのだ。
- 彼はいつも一言多いから、客先でも一悶着起こしそうだ。
最初に説明した通り「一悶着」の「一」は、僅か・ちょっとという意味。数字の「1」ではありませんから、小さな諍いを繰り返したとしても、「二悶着」「三悶着」とは言いません。
「一悶着」の類語
「一」を使った類語
「波乱」には、騒ぎ・揉め事といった意味があります。「一悶着ありそうだ」は、「一波乱(ひとはらん)ありそうだ」と言い換えることができるでしょう。
また、同じ「一」を使った言葉で、「一騒動(ひとそうどう)ありそうだ」と表すこともできます。
【例文】
- 嫁と姑の間で一波乱ありそうだ。
- 財産分与で一騒動起こりそうだ。
「いざこざ」
「いざこざ」には、争い事・揉め事という意味があります。「一悶着」のように、「ちょっと」というニュアンスを表す語は付いていませんが、関係が悪化して深い溝があるという場合にはふさわしくない表現です。よって、「一悶着」に近い意味と捉えても差し支えないでしょう。
【例文】
- 昔、彼女との間にはいざこざがあった。
- 彼らはまたいざこざを起こしたようだ。
「不和」
「不和(ふわ)」には、仲が悪いこと・気持ちの行き違いが起こることという意味があります。意見が合わないという点では「一悶着」に近いと言えます。
しかし、「不和」は「両国間の不和」のように大きな争点がある場合にも用いられますから、「一悶着」と同じように使うにはふさわしくない場合もあります。
【例文】
- 彼らの不和のきっかけは些細なことだった。
- 父と兄の不和は今に始まったことではない。
「波風が立つ」
「波風(なみかぜ)」を、比喩的に、揉め事・ごたごたという意味で用いることがありますね。この場合は「一悶着」と置き換えられるでしょう。
【例文】
- 子供の進学について、夫婦間に波風が立った。
- わざわざ部署内で波風を立てなくても良いだろう。
「小競り合い」
「小競り合い(こぜりあい)」には複数の意味がありますが、小さな揉め事を表す場合には「一悶着」に似ていますね。
【例文】
- 彼らはまた小競り合いをしているのか。
- 隣人と小競り合いがあったので、ばったり会った時は気まずい。
「トラブる」
「トラブる」は、英語の「trouble(トラブル)」を、日本語の動詞化した造語です。揉め事を起こす・いざこざを起こすなどの意味があります。砕けた言い回しにおいては、「一悶着」に近い意味です。
【例文】
- 彼女とトラブっているから、今は顔を合わせたくない。
- 彼は異動する先々でトラブっているな。