「レトリック」の意味と使い方
「レトリック」という言葉には以下のような意味があります。
- 修辞
- 修辞学
- 美辞麗句を並べること
「言葉を飾る」という部分が共通していることがわかりますね。それぞれの意味と使い方について、詳しく見ていきましょう。
意味①:修辞
「修辞」とは、言葉を飾って美しく巧みに表現することです。「修」は飾ること、「辞」は言葉を意味しています。
修辞を用いることで、自分の言葉や文章を相手により強く印象づけられます。上手に使えば、自分の考えを相手に納得させることもできるでしょう。
〈例文〉
「この小説は効果的にレトリックを使っており、とても読み応えがある」
意味②:修辞学
修辞学は修辞の技術について研究する学問です。「美辞学(びじがく)」とも呼ばれています。
〈例文〉
「私は大学でレトリックを学んでいます。」
意味③:美辞麗句を並べること
美辞麗句はもともと言葉や文章を飾るための美しい言葉のことを意味しています。しかし、次第にうわべだけを飾った、中身のない言葉を皮肉るための言葉として「美辞麗句を並べる」という言い回しが定着していきました。
〈例文〉
「あの政治家はいつもレトリックでごまかそうとしているように見える。世間は彼の発言を『ポエム』と揶揄している」
「レトリック」の語源
レトリックの語源は古代ギリシア語の「レトリケー」です。弁論やその技術のことを意味します。
古代ギリシャでは相手と議論を戦わせるのが一般的で、日常生活の中でも議論が行われるほどでした。人々は自分の発言に説得力をもたせる必要があったのです。そのためのテクニックとして生まれたのが、レトリケーです。
レトリケーはのちにアリストテレスの著書『弁論術』の中で体系化され、技術として完成しました。
いろいろなレトリック
レトリックには多くの種類があり、その数は600を超えるとも言われています。ここではその例として「比喩」「擬人法」「倒置法」「反語」の4つを見てみましょう。
比喩
比喩とは似ているものにたとえて表現することです。比喩にはさらにさまざまな種類がありますが、最もよく使うのは「直喩」と「隠喩」です。
直喩は「~のようだ」「~みたいだ」などの言葉を使ってたとえであることを明確にする方法です。「明喩」や「シミリ」という言い方をすることもあります。
一方、隠喩は、「子はかすがい」「雪の肌」などのように、たとえられるものとたとえるものを直接的に結びつけて表現する方法です。「暗喩」や「メタファー」などの言い方もあります。
擬人法
隠喩の一種で、人間以外のものの様子を、人間の動作や状態にたとえて表現することです。「花がそよ風で踊っている」「そんな扱い方は道具がかわいそうだ」などといった使い方をします。
倒置法
通常の語順を変えることで、強調する方法です。日本語の語順は英語などのような明確な決まりはありませんが、動詞が最後に置かれるのが通常です。
たとえば、「私がミスをしました」というところを「ミスをしたのは、私です」とすると、ミスをしたことが強調されます。
反語
一見疑問文のようで、実はその反対の意味の内容を強調する方法です。たとえば、「一度も失敗しない人間がいるだろうか」という疑問文の裏には「いや、いるはずがない」という強い否定が隠れています。皮肉めいた言い方をするときにも使われます。
レトリックの関連語:詩的表現
レトリックは日本語で「修辞」という意味ですが、修辞の類義語に当たる言葉はありません。ただ、似たような意味を持つ言葉として「詩的表現」というものがあります。
詩的表現とは、文字通り詩のような表現をすることです。たとえば、「真っ暗な夜」を「月や星が消えてしまったかのような夜」と幻想的に表現します。擬人法などの比喩を用いることが多いです。
レトリックの英語表現
レトリックの英語での綴りは、"rhetoric"です。「rhet」という省略形で表記されることもあります。
英語で「rhetorical question」というと「修辞疑問文」のことで、日本語でいう反語です。代表的なのは「Who knows?(誰が知っているだろうか)」というフレーズで、反語と同じく「Nobody knows(誰も知らない)」という否定が隠れています。