「打ちひしがれる」とは?
「打ちひしがれる」は、「打ち拉がれる」とも表記します。動詞「打ち拉ぐ」に受け身の助動詞「れる」が付いた言葉です。
「打ち拉ぐ」は、意気消沈させる、精神的打撃などでダメージを与える、気力を失わせる、などの意味をもちます。受け身の「れる」が付いた「打ちひしがれる」は、したがって、激しいショックや精神的苦しみによって気力、やる気を失うことを意味します。
現代日本語では、よく「落ち込む」という言葉が使われますね。要は、「打ちひしがれる」は激しく落ち込む状態ともいうことができます。
「打ちひしがれる」の使い方
「打ちひしがれる」が、精神的打撃を受けて気力を失うという「受け身」のかたちの言い回しであるからといって、外部から衝撃を与えられてのことだけではありません。
自分でやってしまった失敗などによっても「打ちひしがれる」を使うことはできます。つまりは、なんであれ衝撃や困難によって心が深いダメージを受けた状態を表すと理解すればよいでしょう。
具体的な用法としては、「~に打ちひしがれる」というかたちをとることがほとんどです。「~に」の部分には、ショックを受けることになった出来事、あるいはその結果としての苦しみ、悲しみ、絶望、などのような辛い感情を表す言葉がくることもあります。
「打ちひしがれる」の文例
- 小林君は、重要顧客に対しておかしてしまった自分の失敗の大きさに打ちひしがれた。
- 由美子さんは、10年付き合った恋人と別れた悲しみに打ちひしがれた。
- 野球部エースの中村君は、右腕を怪我して絶望に打ちひしがれていたが、見事に復活した。
「打ちひしがれる」の類語
「打ちのめされる」
「打ちのめされる」は、「打ちのめす」の受け身形です。肉体的にも精神的にも激しい打撃を受けて立ち上がれないほどの苦痛やダメージを与えられること、再起不能なほどの大打撃を受けること、を意味します。
また、実際に立ち上がれないほどのダメージでない場合でも、「打ちのめされる気分」「打ちのめされたようなショック」などのように、形容詞的に扱われることも多い言葉です。
「打ちひしがれる」との大きな異なりが一つあります。「打ちひしがれる」は、ダメージにのみに使われますが、「打ちのめされる」は、頻度は少ないとはいえポジティブな体験の結果としても用いられることがあります。
【文例】
- 前田氏は、起業の資金集めが目標の10分の1にも達さない現実に打ちのめされた。
- シャガールの絵を目の前にした恵子さんは、その迫力と感動に打ちのめされた。
- ボクシングの引退試合で、A選手は打ちのめされて負けたが、後悔はなかった。
「意気消沈」
「意気消沈」(いきしょうちん)とは、気持ちや意気込みをすっかり失って、元気がなくなること、がっかりと落ち込んでしまうことを意味する言葉です。
「意気」は、何かをしようという気持ち、気力のことを表す言葉なので、「意気消沈」は肉体的なことではなく、感情面で元気を失うことのみを意味します。
「打ちひしがれる」に比べると、若干落ち込み度は軽いニュアンスです。会話体でいえば「本当にがっくりきた」というところでしょうか。
【文例】
- 志望校受験を目前とした模擬試験で偏差値が急落した健一くんは、意気消沈してしまった。
「心が折れる」
実際の日常会話において、「打ちひしがれる」「意気消沈」などの硬い表現に比べていまや頻繁に使われているのが「心が折れる」です。意味は、困難や障害にあって、頑張っていた気持ちが萎える、意欲を失う、落ち込む、など。
1987年、女子プロレスの試合をめぐり、ある選手が発した言葉がそのルーツといわれており、比較的新しい造語ではありますが、若者言葉から一般の言葉へとすっかり広まり、現在では語彙のひとつとして収録している辞書もあります。
【文例】
- ピアノの発表会に向けて猛練習をしていたのに、右手人差し指を捻挫し、心が折れてしまった。