「些か」の読み方
「些か」の読みは「いささか」です。どちらかと言えば、ひらがなで書かれた方が目にしたことがあるという方もいるでしょう。仲間内や近い関係の同僚との話し言葉では用いられることはあまりありません。現代では、目上の方へ出す改まった文書などで用いられることがあります。
漢字で書く場合には「些か」以外に「聊か」と表記されることもありますが、特に意味に違いはありません。
「些か」の意味・肯定で使う場合
「些か」は、名詞の上に付く接頭語の「いささ」に接尾辞の「か」がついて、動詞を修飾する副詞として使われるようになった言葉です。
意味は、「数量や程度はそんなにたいした物ではないこと」です。「ほんの少し」、「わずか」、「ささやか」という意味でも使われます。しかし、「小さな程度や数量であっても、無視しきれないと懸念される場合」にも使われることもあります。
「ほんの少し」・「わずか」・「ささやか」の例
・あなたがしたことだと聞いて、些か驚きましたよ
・お二人が上手くいかなくなったのは、私にも些か思い当たることがあります。
「例えわずかであっても無視しきれないと懸念される場合」の例
・他の人は問題ないが、Aさんのお客様への態度は些か心配だね
・機密事項が漏れた訳ではないが、社内にスパイがいると考えると些か恐ろしい
「些か」の意味・否定で使う場合
「些か」は、後に打ち消しの言葉を使って否定の表現で使う場合は、「少しも~ない」、「全然~ない」という強い否定の意味になります。文章の形としては「些かも~ない」となり、「些か」に副助詞「も」が付きます。「も」は通常、前の言葉を肯定するために使われますが、後に打ち消しの助動詞「ない」が付くことにより、強い否定の意味になります。
例
・Bさんのふてくされた様子だと、些かも反省していないように見える
・今年は優勝したけど、来年はマークがきつくなるから些かも安心できないぞ
「些か」は古語
「些か」は古来から使われてきた言葉で、意味も現代と変わりはありません。現代語で使うには古くいかめしい感じがする言葉です。
「いささか」の「いささ」は、元々名詞の前に付く接頭語で、「小さい」と言う意味を表しました。その「いささ」に接尾辞の「か」がついて、動詞を修飾する語句に変化しました。「か」は、性質や状態を表す名詞などの語句の語尾に付いて、動詞を修飾する語句に変化させる役割があります。
「些か」をビジネス用語で使う場合
「些か」という語句は、「ほんの少し」や「わずか」などの数量が少ないとか、程度が小さいという意味で使われます。その意味から派生して、ビジネスの場では自らがへりくだる謙譲語としても使えます。
実際は、とても優れた腕前があったり、知識があったりする場合がありますが、自信たっぷりに「できます!」とアピールするのははしたない印象を与える恐れがありますし、目上の方を差し置いて申し出をすると、相手を下に見ているように感じさせる場合があります。
申し出をする際に、本当は能力があるが、「些か」という語句を使って謙遜の表現にして、相手に失礼のないように配慮ができます。裏を返せば、「些か」という言葉は使っていても逆の意味になり、「十分な能力や知識や能力がある」ということになります。
例
・些か腕に覚えがございますので、敵が襲ってきたら私にお任せください
・些かではありますが、学生時代に留学をした経験があります。よろしければ通訳いたしましょうか
「些か」のまとめ
「些か」という言葉は日常の話し言葉で使われることはありません。古来から伝わる物語で良く使われる由緒ある言葉です。目上の方に宛てる手紙などの、書き言葉に使われることがありますし、ビジネスの場では目上の方に対して、謙遜しながら相手を立てる意味で使うこともあります。
なかなか使う機会はないかもしれませんが、相手の立場を高められる言葉として覚えておくことを勧めます。